| 研究課題/領域番号 |
25370936
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| 研究機関 | 東京外国語大学 |
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研究代表者 |
床呂 郁哉 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (90272476)
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| 研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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| キーワード | 人類学 / フィリピン / スールー諸島 / 真珠 / もの（物質文化） / 装飾文化 |
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| 研究実績の概要 |
本研究は、フィリピン南部スールー諸島を中心とする真珠など特殊海産物の生産と利用に関して関係する各地との国境を越えた流通などの関係などを含めて人類学的に調査研究を実施することを目的としている。またその過程で、人類学的なフィールド調査に加えて、19世紀以前から20世紀にかけてのアジア各地における特殊海産物の生産と利用の歴史的背景などに関しても文献調査等を行っている。平成28年度においては、当初予定していたフィリピン南部における真珠に関する実地調査が後で述べるように現地の治安情勢の悪化などで一時的に延期を余儀なくされたことにも鑑み、これまでに得た真珠をめぐる知見との比較検討のために捕鯨によって得られる鯨肉をはじめとする特殊海産物のアジアにおける利用や流通に関しても実地調査や文献調査を実施した。こうした比較参照の作業を通じて、真珠と真珠以外の特殊海産物の生産や利用状況との共通点と差異を検証した。まず共通点としては、真珠の採取や養殖の場合でも捕鯨の場合でも、特殊な技術を背景に特化した専門家・技術者ないし職能集団が存在し、またそうした集団のアイデンティティの問題にも結びつきうる点を指摘できる。また海をはじめとする生態環境の影響を大きく受ける産業、海の生き物を相手にする産業という点でも共通する部分は多い。ただし、具体的な生産技術の詳細に関しては、真珠養殖と捕鯨では、少なからぬ差異も存在した。また、いずれの場合においても真珠や鯨肉などの特殊海産物などの「もの」やその生産の技術が、国境を越えて各地に移動し、旅し、そして現場の環境などに応じた変容を遂げてきた。本研究では東南アジア地域と日本などを含む域外の間のこうした「もの」の移動のネットワークについても実地データと文献資料の両方から分析を行った。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、フィリピン南部スールー諸島を中心とする真珠をはじめとする特殊海産物の生産と利用に関して関係する各地との国境を越えた流通などの関係などを含めて人類学的に調査研究を実施することを目的としている。またその過程で、人類学的なフィールド調査に加えて、19世紀以前から20世紀にかけてのアジア各地における特殊海産物の生産と利用の歴史的背景などに関しても文献調査等を行っている。研究はおおむね順調ではあるものの、平成28年度においては当初、予定していたミンダナオ島南西沿岸部におけるフィールド調査に関しては、現地の治安情勢の悪化により平成28年度はいったん中止を余儀なくされたことによる若干の計画変更もあった。この点については以下に述べるように平成29年における補足調査でリカバリーを図る予定である。
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| 今後の研究の推進方策 |
平成29年度は最終年度でもあり、これまでの調査を通じて得られた知見、データを総合的に比較検討すると同時に、平成28年度には治安の悪化により実施できなかった調査項目なども含めた補足の実地調査等を実施していく予定である。より具体的には、フィリピンからマレーシアのボルネオ島、インドネシア東部などにおけるシロチョウガイ真珠をはじめとする特殊海産物の採取、生産とその国境を越えた利用や流通の現代における実態について俯瞰的に検証すると同時に、時間が許す限り、アジア域外への特殊海産物の流通の動態についても補足調査等を実施する。またこれまでの研究成果をまとまった著作（『真珠―ものと人間の文化史シリーズ』）のなかで公開することを目指して、これまでに集積した文字データに加えて図版・画像データ等も含む資料の体系的な整理・分析作業にも従事する。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度にフィリピンにおけるシロチョウガイなどの採取・生産・利用の状況に関して当初、予定していたミンダナオ島南西沿岸部におけるフィールド調査に関しては、現地の治安情勢の悪化（イスラーム過激派等による活動による）の影響で平成28年度はいったん中止を余儀なくされた。
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| 次年度使用額の使用計画 |
平成29年には前年度にできなかった調査対象項目に関して、比較的治安が安全なフィリピン中北部やマレーシア、インドネシアなどの関連地域などでの補足調査等を進め、この調査のために予算を執行する。更に資料の整理・分析等でもバイト雇用などを通じて一定程度の経費の支出を予定している。
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