研究課題/領域番号 |
25370937
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
足羽 與志子 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (30231111)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 芸術 / 文化人類学 / スリランカ / 紛争 / 暴力 / 美術館 / アジア |
研究実績の概要 |
平成26年度は交付決定額が当初の予定よりも低額であり、スリランカでの二度目の調査を十分な時間をかけて行う資金的余裕がなかった。そのためスリランカ調査の二回目は平成27年度に行うこととし、主として国内での調査および科研以外の経費による海外出張の機会を利用して滞在延長をもって科研の調査を行う方法をとり、スリランカ以外のアジア地域(バンコック)やフランスにある仏教施設の調査を行った。 国内では平成26年11月に福岡アジア美術館で開催された第5回トリエンナーレ「未来世界のパノラマ」でのイベントに参加し、招聘されたアジアからのアーティストおよび学芸員に対して直接にインタヴューを行うことができた。作品のなかではとくに伝統的技法やモチーフを使いながら現代的なテーマを扱うものが目立ち、現代アートの一つのパターンとなっていることを確認した。 バンコックでは現代アートの展示の代表的なスペースであるバンコックアートセンターおよびジャムファクトリーを訪問し学芸員と意見交換を行った。現代アートの先進地域であるタイでは西欧のマーケットに視線が注がれており、むしろ都市中間層が多く訪れる仏教寺院がある種の宗教的なモダンアートの美術館的役割を担っていることを了解し、スリランカとの興味深い類似点、対比点を観察できた。 また、国立新美術館と国立民族学博物館の共催企画「アートの力」の企画委員として実際の企画から展示内容選択、カタログ政策に関わったため、現代社会における民族誌的モノのアートとしての「展示」の意味と可能性を考える新たな視点をえる機会となった。 さらにこれまでの研究の進展のなかで、現地の民族の芸術文化を保存し現代的な文脈で育成する企画の重要性に気がついたため、カナダのバンクーバーにあるブリティッシュコロンビア大学の人類学美術館における活動の調査を行い、一定の成果を得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は交付決定額が80万円となり、当初の予定のスリランカでの二度目の調査を十分な時間をかけて行う資金的余裕がないため、予定を変更してスリランカの調査は平成27年度に行うこととし、平成26年度は主として国内での調査およびスリランカ以外のアジア地域(ベトナム)やフランスにある仏教施設の短期調査を行った。 スリランカでのアートの保存方法の参考にするため、カナダのバンクーバーにあるブリティッシュコロンビア大学の人類学美術館における活動の調査を行った。スリランカでの調査は平成27年度に行うこととする。このように調査地域の順番と地域の多少の変更はあったものの、全体では必要な情報、知見を得ることができており、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
スリランカの調査を行う。主として南部マータラ周辺にあるベラワーが作成する寺院壁画の記録採集、コロンボにある芸術大学およびスリジャヤワルダネ大学の芸術部門の伝統芸能部門へのインタヴュー、バティカロ、ジャフナに住む現代アーティストのインタヴューを行う。とくにベラワーカーストが今も継続して行う病気治療儀礼から派生して独立した作品として流通している仮面や宗教画がアートとして成立していない現状と、スリランカの現代アートの諸問題を中心に調査を行う。 また国内で講師2名を招聘し研究会を行う。当初の予定では平成27年度に学会発表を考えていたが、イメージについての人類学的論文を次年度(平成27年度)に書くことになったため、学会等での成果発表は平成28年度にもちこすこととする。
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