スリランカの仏教寺院の19世紀末から現代までの壁画を中心に内容、構成、製作者、社会的背景、影響等の調査により次の成果があった。1)ブッダの生涯、仏教伝来史、仏教王朝史、ジャータカ物語などがテーマの壁画は、人々が知る寓話を視覚として喚起し、民族紛争時の暴力と情動の経験を重ね合わせて、苦悩に意味を与え、批判も含めた宗教的和解を可能にさせている。2)現代の寓話として寺院壁画の意義は高区、壁画制作を伝統的職能の一つとする低カースト集団の役割は大きい。3)欧米等の特定のミュージアムやアート空間と同じく、仏教寺院はイメージハウスとして、社会に深く関わるパブリック・アートの役割をも担ってきた。
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