イギリス、オランダによる植民地化以降ボルネオ社会は急速に変化してきた。開発と経済発展、キリスト教の導入によるイスラムとの宗教対立の構図、民族意識の形成など、こうした植民地時代以降の社会の本質的変化はしばしば「近代化」ないしはその結果と考えられてきた。本研究はこうした植民地期以降の社会変化にキリスト教諸教派の布教活動が大きな役割を果たしてきたことを明らかにした。境界の無いボルネオ島に国境線を引いた植民地支配は、集団の境界が曖昧だった社会生活にも分離分断をもたらし、民族という社会的境界を画定した。キリスト教会活動は民族集団と民族意識形成を中心的ににない、ボルネオ社会の近代化に大きな影響を与えた。
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