研究課題/領域番号 |
25370943
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
齋藤 剛 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (90508912)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 人類学 / イスラーム / 中東 / ベルベル / 知識 |
研究概要 |
平成25年度の実施計画として掲げていたのは、(1)人類学的ベルベル研究の批判的検討、(2)音文化研究や地域概念の検討、(3)ベルベル系宗教知識人たちの翻訳・宣教活動や宗教詩の朗誦などの実態調査などである。 (1)については、既存の研究の批判的検討の一端として、『日本中東学会年報』に誌上に、欧米における人類学的ベルベル研究の最新の成果をまとめた論集Berbers and Othersの書評を、査読を経て発表した。(2)については、地域概念の再検討について、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の共同研究「地域民族誌の方法論と人類学的空間構想力の可能性の探求」研究会において「ムフタール・スースィーとロベール・モンターニュ――モロッコにおける地域をめぐる二つの眼差し」と題して研究成果発表を行った。(3)については、モロッコにおいてベルベル系宗教知識人の翻訳活動および彼らが翻訳した宗教詩の朗誦の実態について、暗誦者へのインタビュー調査などを実施したほか、フランスにおいて文献資料調査を進めた。 さらに、現地調査を踏まえて、本年度には「ムフタール・スースィー『治癒をもたらす妙薬――モロッコ南部ベルベル人とイスラーム的知の伝統」と題した論考などを発表した。本論考では、20世紀前半に主に活躍をしたモロッコ南部出身のベルベル系宗教知識人の地域、社会、歴史認識が、現地において今日広がりを見せている伝統的イスラーム教育の復興運動に繋がるものであることが明らかにされている。4カ年で計画をされている本研究の目的の一つは、今日ベルベル人の間で展開している「アマズィグ運動」という名で知られた「先住民運動」に顕著にみられる民族観を批判的に検討することにあるが、本論考は、この研究目的を踏まえて、現地人の間に見出される先住民運動とは異なる地域観、歴史観を明らかにしたものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要からも明らかなように本年度には、当初計画していた実施計画の3点のいずれについても、研究を進展させることができた。また研究成果も『日本中東学会年報』、『イスラーム 知の遺産』(共著)、『2013年度 四国遍路と世界の巡礼 公開講演会・公開シンポジウム プロシーディングズ』などで発表をしているほか、口頭発表、招待講演なども合計3本実施しており、円滑に研究を進めることができている。 なお、当初予定していた国際学会での発表を今年度はできなかったが、平成26年度5月に開催される国際学会IUAES(International Union of Anthropological and Ethnological Sciences)において成果発表を行うことになっているので、平成26年度の早い段階で国際的な成果発表の遅れは解消される。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究においては、ベルベル社会における翻訳活動と宗教詩の現地社会での受容の状況、朗誦の実態の一端を明らかにすべく、19世紀を代表するベルベル系宗教知識人ハーッジ・アリー・ダルカーウィーなどをはじめとした人々の手になる宗教詩の研究を進める予定である。また、イスラーム的知識のベルベル社会へのローカル化という現象を把握するうえでは、社会一般の成り立ちについても考察を深める必要があるので、この点についても研究を進めていく。 研究に際しては、昨年度に続き宗教詩の暗誦者へのインタヴューや朗誦の場面への参与観察、およびインターネットでは入手不可能な文献資料の収集のために現地調査を、モロッコおよびモロッコからの移民が多数居住しているフランスなどにおいて実施する予定である。
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