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2015 年度 実施状況報告書

北西アフリカ圏域におけるベルベル系宗教知識人による翻訳活動をめぐる人類学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 25370943
研究機関神戸大学

研究代表者

齋藤 剛  神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (90508912)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2017-03-31
キーワード人類学 / 中東 / イスラーム / ベルベル / 民衆 / 個
研究実績の概要

本研究では、宗教詩の編纂などを通じてベルベル系シュルーフ社会の再イスラーム化に貢献した19世紀の宗教的知識人ハーッジ・アリー・ダルカーウィーという個人に着目しているが、本年度は、まず、宗教的知識の伝達に果たす個の役割について検討を進めるうえで不可欠な、既存の理論の整理と検討を進めた。
この点に関わる研究成果としては、国立民族学博物館共同研究において、個に着目した研究の理論的課題や、既存の研究における宗教的知識の捉え方の問題点などを明らかにした口頭発表を2度行なったほか、「個への視座、個からの視座」と題した論考を『民博通信』誌上で発表している。また、イタリア・プローチダ島で開催された国際ワークショップに参加し、ベルベル人の移動と故郷に関わる認識の変容を論じた研究成果を発表している。
これらの研究と平行して、ダルカーウィー教団員が所蔵する宗教詩についての調査・分析を進めた。調査から明らかになってきたのは、ベルベル語による宗教詩が、一般人が日常生活の中で涵養してきた民俗音楽をはじめとした音文化に立脚して作成されていることである。このことは、知の伝達について検討を進めていくうえで、知識人と民衆を対抗的に捉え、知が知識人から民衆に伝達されると捉える「民衆」論に修正を迫るものである。
研究の推進を通じて明らかになってきた以上のような「民衆文化」をめぐる理解を踏まえて、報告者は、人間文化研究機構のネットワーク型基幹研究プロジェクト「現代中東地域研究」のキックオフ国際シンポジウム「中東における「民衆文化」の編成と「民衆」概念の再検討」を計画立案し、シンポジウムにおいて「問題提起」を行なった。また、科研研究における問題意識を一層深化・発展させるべく「個-世界論:中東から広がる移動と遭遇のダイナミズム」と題した研究課題を国立民族学博物館共同研究に応募し、審査を経て採択されている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究実績の概要からも明らかなように本年度は、超地域的な宗教的知識の流通と個別社会におけるそのローカル化について研究を進めていくうえで不可欠となる理論的視座を得るために、個、民衆イスラーム論、民衆文化などに焦点を定めて検討を進め、研究成果発表を行なって来た。
平成28年度には、それらの研究成果を踏まえて、学術雑誌への投稿、国際シンポジウム開催が予定されており、研究をさらに発展させる具体的な筋道もすでに具体的に設定されている。
また宗教詩の実態については、ダルカーウィー教団員が保有する宗教詩について整理をしたうえで、それらの詩の朗唱法や相互の関連、アラビア語詩とベルベル語に翻訳された詩の実態について調査を実施しており、理論面だけでなく宗教詩の実態についての研究も進んでいる。

今後の研究の推進方策

今後の研究推進方策としては、平成27年度に口頭で発表した研究成果のうち、とくに民衆イスラーム論および民衆文化論を対象とした研究について、学術雑誌に投稿すべく準備をさらに進めてゆく。
また、ダルカーウィー教団の宗教詩についての分析をさらに進めるのと同時に、宗教詩とベルベル社会の音文化に関わる補足調査を実施したうえで、これまでの研究成果を総括する予定である。

次年度使用額が生じた理由

平成27年度開始時には計画していなかった国際シンポジウムを平成28年2月末に開催した。これに伴い、当初2月から3月にかけて予定していた現地調査の期間について見直さざるを得なくなった。

次年度使用額の使用計画

平成28年度には現地調査を実施する予定であるが、平成27年度の科研費残額はこれに充当することを計画している。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)

  • [国際共同研究] 社会科学高等研究院(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      社会科学高等研究院
  • [雑誌論文] 個への視座、個からの視座2016

    • 著者名/発表者名
      齋藤 剛
    • 雑誌名

      民博通信

      巻: 152 ページ: 16-17

  • [学会発表] 問題提起:中東における「民衆文化」の編成と「民衆」概念の再検討2016

    • 著者名/発表者名
      齋藤 剛
    • 学会等名
      人間文化研究機構 ネットワーク型基幹研究プロジェクト「現代中東地域研究」キックオフ・国際シンポジウム「中東における「民衆文化」の編成と「民衆」概念の再検討」(主催:人間文化研究機構)
    • 発表場所
      国立民族学博物館
    • 年月日
      2016-02-27 – 2016-02-27
    • 国際学会
  • [学会発表] 個-世界論―問題提起 Ⅱ 民衆イスラーム論の陥穽2016

    • 著者名/発表者名
      齋藤 剛
    • 学会等名
      国立民族学博物館共同研究「個-世界論:中東から広がる移動と遭遇のダイナミズム」
    • 発表場所
      国立民族学博物館
    • 年月日
      2016-01-23 – 2016-01-23
  • [学会発表] 個-世界論―問題提起2015

    • 著者名/発表者名
      齋藤 剛
    • 学会等名
      国立民族学博物館共同研究「個-世界論:中東から広がる移動と遭遇のダイナミズム」」
    • 発表場所
      国立民族学博物館
    • 年月日
      2015-10-17 – 2015-10-17
  • [学会発表] Migration and the Changing Meanings of Homeland among the Moroccan Berbers2015

    • 著者名/発表者名
      SAITO, Tsuyoshi
    • 学会等名
      International Workshop on Mobility, Migragion, and Its Discontents, (The Host Institution: Università degli Studi di Napoli "L’Orientale")
    • 発表場所
      Università degli Studi di Napoli "L’Orientale", Procida
    • 年月日
      2015-09-18 – 2015-09-18
    • 国際学会

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公開日: 2017-01-06  

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