研究課題/領域番号 |
25370944
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
古谷 嘉章 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 教授 (50183934)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 文化人類学 / 先史文化 / 縄文文化 / 現代アート / 博物館展示 / 世界遺産 |
研究実績の概要 |
1.[2014.7.20]「縄文コンテンポラリー展inふなばし2014~縄文の手・現代の手」(千葉県船橋市飛ノ台史跡公園博物館)を、企画準備段階からフォローして本年度の新しい展開について把握するとともに、展覧会の展示等について、アーティストによるギャラリートークおよびパフォーマンス、インタヴュー等を通じて実態を調査した。 2.[2014.8.25-8.29]青森県における縄文文化の活用およびそれとアートとの関係についての実態調査を、青森県立美術館、国特別史跡三内丸山遺跡(縄文時遊館、三内丸山遺跡保存活用推進室)、青森県立郷土館、青森市森林博物館、小牧野遺跡(青森市)において実施した。それを通じて、北東北地方および北海道の縄文遺跡18地点の世界遺産登録をめざす現在進行中の運動の状況をはじめ、縄文遺跡群を地域の歴史遺産として保存し活用する様々な取組について具体的に理解することができた。 3.[2014.9.7]「縄文コンテンポラリー展inふなばし2014」の一環として開催された「縄文アート座談会」に参加し、現代アートと縄文文化の関わりについて、出品アーティストを含む多分野の参加者との議論を通じて、現代社会において縄文文化がもちうる多様な意味について具体的な知見を得ることができた。さらに同展カタログに展覧会のレヴューを掲載した(日本語版および英語版) 4.[2015.3.7-3.19]連合王国の4研究機関において、縄文文化をめぐる日本の現状との比較を視野に入れつつ、イギリスにおける先史文化の現代的意義とアートの関係について調査・研究交流をおこなうとともにセミナーにおいて研究報告を行った。実地調査を行った機関は次の通りである。(1)University of East Anglia (Sainsbury Institute for the Study of Japanese Arts and CulturesおよびSainsbury Centre for Visual Arts)、(2)University of Cambridge、(3)British Museum。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、先史文化の研究と現代アートの制作の間で近年顕著になりつつある相互乗り入れ的な関係の深まり、具体的には「現代アートを用いての先史文化理解」と「先史文化を利用しての現代アート制作」が、どのように影響を与え合い連動し、どのような効果を生み出しているのかについて縄文文化をめぐる事例を中心に詳細に明らかにすることを目的とするものである。 平成26年度に実態調査を予定していた国内3カ所の博物館のうち、「船橋市飛ノ台史跡公園博物館」(千葉県船橋市)においてはひきつづき「縄文コンテンポラリー(アート)展」の定点観測を継続し、国指定史跡三内丸山遺跡ならびに青森県立美術館等においては、予定通り実地調査を行い、三内丸山遺跡および小牧野遺跡を中心とする青森県ならびに北東北・北海道地域における縄文遺跡の活用の実態について詳細に理解することができた。なお予定していた岩手県内の施設については、次年度に延期することとした。また平成25年度に実態調査を行った長野県茅野市における土偶「縄文の女神」の国宝指定をめぐる現況については、電話インタヴューも含め逐次情報を収集した。海外調査として、国内の状況との比較を含めて、連合王国において予定通り実態調査を実施した。調査対象としたのは、予定していたイースト・アングリア大学関連の2機関と大英博物館に加えて、ケンブリッジ大学の博物館であり、イギリスにおける先史遺跡をめぐる状況について理解を深めることができた。さらにイースト・アングリア大学ではセミナーで研究報告する機会を得て、本研究の中間的な総括について議論をする機会を得た。また国際学会(IUAES)[2014.5]においても本研究にかかる中間報告を行った
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、平成27年度においては、当初の計画通り、先史文化と現代アートのインターラクションについて全般的な文献研究を継続すると同時に、つぎのような実態調査を行う。 (1)船橋市飛ノ台史跡公園博物館における「縄文コンテンポラリー展」を継続して調査し、「環サハリン、アムール、カムチャッカ~北米大陸へとつながる古代と現代」をテーマとする予定の本年度の展覧会の特徴について把握すると同時に、15回目を迎える同展覧会の経年変化について明らかにする。 (2)「御所野縄文公園・博物館」(岩手県)、「滝沢村埋蔵文化センター」(岩手県)、「八戸市埋蔵文化センター是川縄文館」(青森県)において実態調査を行い、岩手県北部および青森県南東部における縄文文化と現代アートの関係について、展示を始めとする文化施設の活動および地域全体としての縄文関係の取組について具体的に明らかにする。 (3)ブラジル連邦共和国の2地域において、先史文化と現代アートの関係について実態調査を行う。調査対象とする主たる施設は、ベレン(パラ州)のエミリオ・ゲルヂ博物館、サンパウロのサンパウロ大学考古学民族学博物館およびサンパウロ大学現代美術館を予定している。 以上の実態調査に加えて、長野県、新潟県、青森県のすでに実態調査を行った各地の活動について、ひきつづき現況把握のための資料収集に努めると同時に、徐々に国内外の諸事例の比較を視野に入れた分析に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
岩手県において本年度実施予定だった実態調査について、日程調整の不調から、次年度へと延期したため。 船橋市飛ノ台史跡公園博物館において実施した2回の調査のうち1回については、同一の出張期間において他の用務との重複が生じたため、本助成金からの出費を行わなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の研究計画において、ブラジル連邦共和国において実施する実態調査に関しては、現在の円安のため、相当程度の費用の増加が見込まれるため、残金はそれに充当する。 当初予定していた岩手県に加えて青森県東部における実態調査を行うため、その費用増加を補填する。
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