本研究の目的は、日本軍主導の回教工作(対イスラーム宣撫・懐柔工作)の全体像および地域的展開を明らかにし、日本軍占領下の回教徒社会(主に回民)の具体的状況を再構成し、植民地主義と中国の「少数民族」との関連性を検討することにある。中国の「少数民族」地域における日本軍の植民地支配についてはその実態はほとんど解明されていないことをふまえ、本研究では「蒙疆」の回民に注目し、日本軍特務機関や民間団体の回教工作の全貌、日本軍の傀儡団体の組織構成と活動内容、回民社会の権力構造の変容を史料(特に日本軍の機密史料、傀儡団体の機関誌)および口述資料にもとづいて再構成し、その問題点に検討を加えた。
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