研究課題/領域番号 |
25370947
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 奈良県立大学 |
研究代表者 |
玉城 毅 奈良県立大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10507312)
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研究分担者 |
西村 一之 日本女子大学, 人間社会学部, 講師 (70328889)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 災害研究 / 東アジア研究 / コミュニティ |
研究概要 |
周期的に襲ってくる台風が人々の生活にどのような影響を与えたか、それに対してどのように対応したかについて、家屋被害・家屋構造・家づくりに着目して文献調査と現地調査を行なった。 文献調査は以下のとおりである。①沖縄気象庁による台風と台風被害に関する資料を収集・整理・分析した。②米軍人官僚による行政視察に伴って沖縄県の全市町村が作成した「市町村の概要」(1951)の中から、1951年当時の家屋の状況(建築構造・屋根材)に関する記録を整理した。③奄美諸島における災害が網羅的に記録されている『名瀬消防沿革史』(名瀬市1995)の中から台風被害に関する記録を抽出して整理した。さらに、④台湾における災害に関する資料を収集した。これについては整理・分析は今後の課題である。以上の作業によって、沖縄・奄美・台湾の近代期の台風災害の特徴が明らかになりつつある。 現地調査は、沖縄島北部と宮古島(2013年8月31日―9月12日)と台湾東部(2013年12月24日―2014年1月2日)で行なった。いずれも台風の経験・災害の実態・家づくりの慣習について聞き取り調査を行なったが、宮古島では、特に大きな被害をもたらした台風サラ(1959年)・台風コラ(1966年)・台風デラ(1968年)を経験した人びとに台風の経験と被害の実態について話をうかがった。台湾東部では、アミ族の村落を中心に中心に聞き取り調査を行なった。 以上の調査を通して、沖縄島・宮古島・奄美諸島・台湾東部における。災害の実態を一定度明らかにすることができた。今後の課題としては、①さらに災害の実態に関するケーススタディを続けることと、②各地の災害を社会文化的コンテキストで捉えて、産業構造の変化と台風への耐性の変化の相関を明らかにすることである。それによって、各地の災害からの復興力とコミュニティの回復力を明らかにすることが見込まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的に合致する文献資料を発掘することができ、また多くの情報を提供してくれるインフォーマントと出会うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
文献調査については、① 昨年度に収集した文献資料の整理・分析を進め、 沖縄・奄美・台湾における家づくりの慣習に関する新たな資料の収集・分析を行なう。現地調査については、昨年は行わなかった奄美と八重山の調査を行ない、台湾については、引き続き台湾東部を調査する。 それによって、奄美から台湾にかけた「台風の通り道」における台風災害の実態を明らかにするとともに、①各地の災害と復興が、地勢・環境的な特性によって違いが生じるか、②産業構造の変化などのマクロな社会変動が災害と復興にどのような影響を与えるか、③家づくりの慣習に代表されるコミュニティの文化的特性が災害と復興の局面でどのように機能するかについて、体系的に明らかにすることが見込まれる。 沖縄については、本土復帰(1972年)前後の社会変化によって家屋構造の変化が促進されて、それが家屋災害の減少と結びついていることがみえてきた。台湾東部については、1970年代から盛んになった海外出稼ぎと漁業の展開が、家屋構造の変化を促進していることがみえてきた。これらの傾向を実証的に明らかにすることで、台風の通り道における災害の比較社会史を描き出すことが可能になると見込んでいる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究初年度は文献調査と現地調査を重点的に行ない、多くの資料を収集することができたが、資料整理は部分的なものに留まり、そのための支出が抑えられた。 初年度に収集した資料の整理ための費用に充てる。
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