研究課題/領域番号 |
25370947
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研究機関 | 奈良県立大学 |
研究代表者 |
玉城 毅 奈良県立大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10507312)
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研究分担者 |
西村 一之 日本女子大学, 人間社会学部, 講師 (70328889)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 台風 / 家屋被害 / 家づくりの慣習 / 社会変化 / 住宅政策 / 東アジア研究 |
研究実績の概要 |
これまでの調査の成果を5月と11月の2つの国際学会で発表した。5月の学会では、1960年代まで、台風が多くの家屋被害をもたらしたことを具体的に明らかにした上で、太平洋戦争後の家屋構造の変遷と、村の慣習として実践されてきた家づくりの慣習の変化過程を報告した。かつて村に埋め込まれた社会関係資本は台風時に機能していたが、戦後の社会変化によって相互扶助の範囲が縮小したことを明らかにした。 11月の学会では、これを踏まえて、日本復帰(1972年)前後まで、相互扶助の範囲を狭めながらも「身内」の相互扶助によって家が建築されていた様子を描き出した。しかし、それも1960年代・70年代以降にRC家屋が普及したことで、家屋の台風耐性が強化されるとともに、家づくりは「村の問題」から「お金の問題」に変わったことを実証した。沖縄家屋構造と外観は大きく変化することになったが、近代的な家屋の内部(間取り)は伝統的な家屋と同じであることを例証し、変動する社会環境の中で文化が持続していることを指摘した。 これらの研究成果と意義は、沖縄の人々の台風とのつきあい方の変遷を、沖縄戦後史の文脈で明らかにした点にある。俯瞰的にいえば、自然と社会と文化の三者が相互作用する中で、台風による家屋被害は減少したが、かつてのコミュニティの災害への対応力という点からいえば、その力が弱まっているといえる。沖縄の実態はみえてきたが、今後の課題は、それが奄美や台湾でどうなっているかを明らかにすることである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、研究代表者の研究成果については、1つの論文(「沖縄における台風のインパクト:災害対策としてのコミュニティ」『沖縄・奄美島嶼社会における災害・防災の歴史的変遷に関する包括的研究』pp.142-154、2013)と3つの学会で報告した(2013年に1回、2014年に2回)。沖縄の部分については概ね当初の目的を達成している。
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今後の研究の推進方策 |
研究分担者の担当部分である台湾東部と、研究協力者の担当部分である琉球災害史、及び奄美の実態を含めた調査成果を、2015年5月25日の文化人類学会第49回研究大会で分科会で報告する予定である。これを踏まえて、台湾・沖縄・奄美の比較研究として体系化し、論文集などの形で公刊する準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は、調査計画の最終年度であり、研究成果を学会で発表する予定である。そのための分担者と協力者との打合せを含めた旅費を計上する。また、口頭発表から論文執筆へと展開するための補足調査も計画している。
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次年度使用額の使用計画 |
5月30日・31日に大阪にて文化人類学会出席のための旅費。9月の沖縄での補足調査のための旅費。
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