マレーシアに属するボルネオ島サラワク州に住むイバン人の社会において近代がいかに形成されてきたかを家族史を通じて明らかにしてきた。焼畑農耕を主生業とし、精霊との交渉に重きを置く世界・社会観をもつイバン人は、19世紀の中葉から英国人の家系による私的王国のもとで近代化をとげてきたが、この過程を文献資料の解析による歴史学の対象としてではなく、いくつかの家族の記憶にもとづく体験の問題として捉えた。キリスト教への改宗、生業の変化、丘陵部における比較的孤立した日常生活から都市との関わりのある生活への変化など、近代化の多面的な進展を複数の世帯(家族)からの聞き書きによって確認した。
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