研究課題/領域番号 |
25370949
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
上杉 富之 成城大学, 文芸学部, 教授 (00250019)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | メディカルツーリズム / 不妊治療 / タイ / 親子 / 家族 / 結婚 |
研究概要 |
本研究は、近年ますます盛んになりつつあるメディカルツーリズムとしての不妊治療に注目し、現在世界的な規模で進行している親子・家族・結婚観及び制度の変動の実態を実証的な調査を通して明らかにすることを目的としている。 本年度はまず、関連著書や論文集、学術論文等を収集するとともにそれらを批判的に検討して理論的な整理を行った。その成果は、「ポスト生殖革命時代の親子と家族」(2013年7月6日開催、第7回基礎法学総合シンポジウム)や「『社会的親』と『心理的親』―アメリカ及びカナダにおける法的な親子概念の拡張―」(2014年3月7日開催、日本生殖医学会倫理委員会第90回委員会報告)などとして口頭発表を行うとともに、「ポスト生殖革命時代の親子と家族―多元的親子関係と相互浸透的家族―」(2014年3月刊行、『法律時報』86巻3号)等の論文として刊行した。 平成25年度にはまた、メディカルツーリズムの実態調査の一環として、日本人不妊治療患者(客)を主要な顧客とするタイ・バンコクのメディカルツアー会社、GID(ブレンダ)を訪問し、同社の代表者にインタビューを行い、タイにおけるメディカルツーリズム、特に卵子提供や代理出産等の不妊治療についての概要を聴取した。また、タマサート大学社会学・人類学部を訪問し、先端的生殖補助医療が社会や文化に及ぼす影響に関心を持つ研究者(教員)らと懇談し、情報や意見を交換した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度は、タイにおける不妊治療を中心としたメディカルツーリズムの実態調査を集中的に行う予定であったが、以下のような2つの理由から限定的に調査を実施せざるを得ず、当初の計画よりやや遅れている。1つには、タイにおいても提供卵子や代理母出産等を用いた不妊治療は医学的、倫理的、政治的にかなり微妙な問題であり、インタビュー調査等に応じてくれるメディカルツーリズム斡旋会社や医療機関等を探すのが困難であったことがある。それに加え、2つ目として、平成25年の9月以降、タイの首都バンコクを中心にして反政府暴動が激化し、調査研究を実施すること事態が困難となったことがある。以上の2つの理由から、本研究は、当初の計画よりやや遅れていると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後もタイにおいて不妊治療を中心としたメディカルツーリズムの調査を継続するが、その際、現地大学・タマサート大学の研究者等から事前に情報や協力、助言を得るなどし、調査時期や調査方法等をもっとも効果があがるように工夫する。また、反政府暴動が当面は続くと予想されることから、現地での実地調査に加え、タイの新聞や関連事項に関する著書や論文等の文献情報を収集・分析するなどし、現地調査に代わる、ないし現地調査を補う情報入手経路を積極的に開拓することを試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画では当初、平成25年度は現地調査、特にタイにおける現地調査を予定していたが、調査予定地のタイ・バンコクにおいて平成25年9月以降断続的に反政府暴動が発生するなどし、計画通りには調査研究を実施することができなかった。そのため、タイでの現地調査に伴って発生する研究経費の支出を必要としなかった。 タイ・タマサート大学の研究者らから事前に情報や助言、協力を得て、平成26年度は当初の計画より長い期間の現地調査を実施することで繰り越した助成金も効果的に使用する。
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