最終年度には、収集済み資料を活用した報告につとめ、若干の補足的な資料収集もおこなった。具体的には、①東アジア科学史国際会議にて米国海軍軍政学校について、②ジョージタウン大学史学科セミナーにてジョージ・カー(George H. Kerr)の史観について、③東アジア村落開発国際フォーラムにて米国人による戦後沖縄農村調査とその延長について口頭発表した。論文は、これらの発表内容を組み替えて2本にして発表した。資料収集は岡山、沖縄、ニューヨークおよびワシントン、台湾、韓国でおこなった。 研究期間全体をふりかえれば、二〇世紀中葉の沖縄と台湾を結ぶキーパーソンの一人であるカーが、戦前の留学および中等教育で、戦中の軍政調査および民事訓練で、そして戦後の台湾外交および琉球史編纂の過程で作成した個人文書と行政文書について、沖縄(琉球大学、県公文書館)、台北(二二八紀念館)、ニューヨーク・ワシントン(コロンビア大学、海軍図書館、国立公文書館)に残る関連文書の調査をおこなったことになる。うち二二八紀念館の資料については一般利用できず全体像が不明であったが、資料受入時の担当者を研究協力者に迎えた共同調査の結果、把握することができた。とりわけ、台湾軍政計画の行政文書は、先行研究が探索して見つけられなかった資料であり意義深い。 上記の研究協力者の企画案にもとづいて「台北二二八紀念館典蔵文物特展」(2015年6月24日~10月25日)が開催され、計画顧問として加わった。
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