研究実績の概要 |
平成26年度は、第一にMGH Libelli de liteに含まれている叙任権闘争期の文献(BonizoのLiber ad amicum, Deusdeditのlibellus contra invasores et symoniacos)の他、比較対象として 12世紀にやはり皇帝と教皇の間の対立に関して著されたDialogus de pontificiato sanctae Romanae eclesiaeについて、そこで用いられている法的な概念、法的な論証方法等について検討を加えた。もちろん、Bonizo, Deusdeditのいずれもグラーティアーヌス以前の教会法学者であるので法源についての知識は豊かであり、諸法文の間の関連付けについても箇所によってはかなり論理的な操作を行っていることが確認される。しかし同時にそれらが神学的な論法と無媒介に結び付けられており、11世紀の教会法学の特徴がよく現れている。 これと並行して、第二にコンラート2世(国王在位1024-1039)、ハインリヒ3世(1039-1056)の国王証書について、そこで用いられている概念や法的な論理について調査を開始した。その結果、未だ全体について検討が終了したわけではないが、この時期にはザクセン朝の時代との連続性がかなり強く、同時代の教会法学文献に見られる法的な概念等の革新等を確認することは困難であった。これまでの部分的な検討の結果、ハインリヒ4世期には例えば教会フォークタイに係る証書等において詳細で正確な表現と、諸権力の間の秩序・関係を全体として捉えようとする傾向、さらには法源秩序の構造についての知的把握の萌芽が見られるように思われるので、ハインリヒ3世期との対比が問題となることが明らかになった。
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