2016年度は本研究課題最終年度として、複数の研究成果を公表した。その成果をベースとして、インドネシア司法の問題点を明らかにするために、新たに法の支配への重要性の一方、学術的な研究の対象となってこなかった法律関係職(弁護士、公証人、裁判所書記)の研究についても着手し、この研究は萌芽(挑戦)研究として科研費の申請を行っている。 本年度に発表した研究のうち、特に本研究課題にかんれんするものおよびその概要は次の通りである: 「インドネシア裁判官任用の変遷:インドネシアにおける官僚的司法のルーツに関する研究ノート」(名古屋大学法政論集)は、2015年度に学会報告を行った研究を論文化したものである。また、"The Objects of Comparison in the Comparative Study of Constitutional Law: Case studies of transplantation of the constitution in Japan and Indonesia"は、同じように西洋法(特にフランス法)を継受した日本とインドネシアにおける司法制度・法制度の発展を論じたものである。「東南アジア法史研究回顧」(法制史研究)は、タイ、マレーシアおよびインドネシア法の法制史研究の経過および現状を共著で論じたものであり、このうちインドネシア法の部分を担当し、インドネシア法制史研究において法曹・司法に関する研究を分析した。また、今後の発展を目指す研究として、アジア法社会学会(シンガポール)において "The Place of Non-Judicial Staff in the Judicial Administration: Preliminary Research on Court Clerk in Indonesian District Court"を報告した。
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