研究概要 |
本年度は、J・フォーテスキューの国制論を内在的に理解する上で重要な彼の著作『イングランドの統治』(The Governance of England: The Difference between an Absolute and a Limited Monarchy: De Dominio Regale et Politico)を解読するための準備作業として、同書の写本および刊本の調査・検討を進めた。 写本については、すでにコピーの形で入手済みであったランべス写本(Lambeth 262)と8月にイングランドに出張した際に新たに写真撮影の形で入手したケンブリッジ大学図書館蔵の写本(Cambridge University Library Ll, III, 11)の比較検討を始めた。この他、英国図書館蔵の2写本(Cotton Claudius A VIIIとHarley 1757)も部分的に比較参照した。他方、刊本については、同じくケンブリッジ大学図書館蔵の初版(1714年)と立教大学図書館蔵の第2版(1719年)の「序文」「献呈の辞」等を比較検討した。 また、フォーテスキューの小作品『ランカスター家の権利の弁護』(Defensio Juris Domus Lancastriae)を解説付きで邦訳し、『法政研究』第80巻第4号に「資料」として掲載した。本作品は直接国制論に関係するものではなく、王位継承権について論じたものであるが、本作品からは、ヘンリ1世の死亡(1135年)後の王位継承時にすでに議会が存在していたとフォーテスキューが論じていることが明らかになった。
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