調停の実務及び理論を現代化するにあたって、北米等における実践、著述、教育などを参考にすべきという合意は日本においても形成されつつある。しかし一方で、調停トレーニング等の活動は、当事者をなだめ、スムーズに手続を進めるためのテクニックに過ぎないという表層的な理解にとどまっているのがむしろ現状と思われる。本研究では、日米における実務の分析と共に、米国での調停教育の実態を踏まえ、実務に接合する形で調停を理解する枠組みの構築を行った。 従来は、臨床心理学由来の傾聴技法適用ないし、せいぜい交渉理論との組み合わせと調停技法を同一視されていたが、本研究では、むしろ調停を当事者の人生における困難場面への支援ととらえることで、基礎付けされた実践の可能性が開かれたと考えている。これによって、ケア論や社会福祉論とのリンケージが明確になり、調停人がコンピタンスとして持つべき知識や態度が明らかにされた。これによって、テクニック指向ではなく、プロセス指向・システム指向での活動の位置づけが可能になったと考える。 研究成果としては、JCAジャーナルでの全24回の連載記事、日本弁護士連合会の『自由と正義』への寄稿、NBLへの寄稿などの形で公表した。さらに、仲裁人協会における「調停技法トレーニング」などの形で、実務家が学習可能な形での成果の提供も行った。
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