研究課題/領域番号 |
25380010
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
苑田 亜矢 熊本大学, 法学部, 准教授 (80325539)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 基礎法学 / イングランド法制史 / 学識法 / コモン・ロー / 訴訟手続 |
研究概要 |
本研究の目的は、証拠法の観点から、イングランドの教会裁判所と国王裁判所の実務を分析することを通じて、12世紀のイングランドにおける学識法的訴訟手続とコモン・ロー的訴訟手続の現実および相互関係について解明することにある。本年度に実施した研究の成果は、次の通りである。 まず、12世紀の学識法的訴訟手続とコモン・ロー的訴訟手続とに関する研究史を概ね整理することができた。 次に、12世紀の教会裁判所における学識法的訴訟手続の実務上の実態を明らかにする作業に着手することができた。その作業には、以下の三つの史料を主として用いた。 第一は、『訴訟手続論』である。12世紀のイングランドで作成された『訴訟手続論』については、最古の‘Ulpianus de edendo’(ないし‘Incerti Auctoris Ordo Iudiciorum’ と呼ばれる)をはじめとして、合計で7点の作品が伝来しており、刊本化されているものについては日本内外の図書館で刊本を入手するとともに、刊本化されていないものについては、イギリスのロンドンの英国図書館やケンリッジ大学図書館で保管されている写本を調査することができた。13世紀の『訴訟手続書』と比較しながら、証拠法に関する箇所を検討中である。 第二は、『訴訟方式書』である。12世紀のイングランドで作成された『訴訟方式書』についても、一部の刊本と一部の写本を調査することができた。 第三は、イングランドの(大)司教達が発給した文書である。教会裁判所における判決の記録を含むそれらの文書を、司教座毎に編集してある刊本『イングランド司教文書集』を用いて、網羅的に調査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
史料については、刊本であれ、写本であれ、その所蔵図書館等を、前の年度のうちに予め調査しておいたため、史料の調査や入手などを概ね順調に進めることができたためだと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、前年度の計画のうち終了させることができなかった部分について継続して取り組むとともに、国王裁判所におけるコモン・ロー的訴訟手続について、証明方法に着目しつつ検討する。その際、『グランヴィル』という裁判実務書のみならず、国王裁判所の実務に関する史料を用いる。 『グランヴィル』と通称される『イングランド王国の法と慣習についての論考』(1189年頃作成)については、刊本があり、写本について分析した研究もあることから、それらを用いて検討する。 また、国王裁判所の実務に関する史料に関しては、12世紀には国王裁判所に訴訟記録を残すシステムが存在しなかったことから、散在する裁判関係史料を様々な史料の中から拾い集めて内容分析をおこなう。その際、様々な史料から裁判関係史料を収集してある刊本『ウィリアム1世期からリチャード1世期までのイングランドの訴訟』も利用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
資料収集のための国内出張を計画していたが、日程を調整することが叶わず、国内出張を遂行することができなかったため。 資料を所蔵している国内の大学に出張し、資料を収集する。
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