本研究は、1934年通信法(Communications Act of 1934)および1996年電気通信法(Telecommunications Act of 1996)を根拠として行われている米国のメディア産業構造規制が、言論・出版の自由を保障する合衆国憲法修正第1条上どのように位置づけられているかを検討するものである。しかし、2000年代後半より通信メディアの勢力が拡大したこと、米国の情報通信メディア政策の失敗によって、ネットワーク中立規制の問題が主要な論点となり、特に通信メディアに適用されてきたところの、当初コモン・ロー上の法理であったが1934年通信法によって制定法上の法理として採用され、独自の法理が構築されてきた「コモン・キャリア」(common carrier)法理が現在のメディア市場においても適用されうるのか、また適用されないとすれば、通信メディアを修正第1条上いかにとらえるべきかが議論されるようになった。 このような状況の急激な変化は2012年の研究計画作成当時においては十分に予測できなかったものであるが、最終年度においてその研究の端緒を開くことができた。 一方で当初の研究計画では、米国連邦通信委員会(FCC)が4年ごとに行うメディア産業構造規制に関する規制改革審査を主な研究対象とするとしたが、前述のメディア市場の急激な変化に伴い、2014年に公表される予定であった同審査報告書が公表されなかった。ただ審査は継続されており、そこではメディア市場の変化に対して修正第1条上どのように評価すべきかを中心課題とし、情報の多様性の確保などの基本原理の詳細な検討を行っているので、その基本的立場を整理したうえで、今後公表される報告書を検討する予定である。
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