本研究は、先端医療技術が提起する倫理的問題に関し規制手段として用いられることの多いソフトローについて、その意義と実態の解明を課題とした。研究成果は次の3点に見出される。第1に、ソフトローは法としての実効性が弱い法ならざる法であるが、倫理的原理に支えられた公正な秩序形成への法の側からのコミットメントである。第2に、ソフトな法規制は多層的法体系の中でハードローと構造的に連関し、多元的社会における法秩序形成の1つの手段である。しかし第3に、ソフトであるがゆえに法内容に曖昧さが残り、法実現の過程で微細な非倫理が紛れ込む危うさを常に孕む。生命倫理ソフトローに関する研究の端緒として更なる解明を課題とする。
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