研究課題/領域番号 |
25380021
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
吉村 朋代 広島国際大学, 心理科学部, 准教授 (70284148)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | fideicommissum / ローマ法 / 信託 / 遺贈 / 遺言解釈 / 後見 / 財産管理 / ローマン・ダッチ・ロー |
研究実績の概要 |
今年度は、前年までの検討で明らかになった、ローマ法信託遺贈の構造や技法、法システム全体にもたらした意義等を踏まえて、特に信託遺贈の後見的機能を中心に検討した。信託遺贈に関わるローマ法資料には、年少者や女性、庇護者等なんらかの保護を要すると思われる立場の者が受益者に設定されている事例が数多く見られる。信託遺贈は、遺言者がその財産の一部または全部を、受託者を介して、受益者に移転する方途だが、このような保護を要する受益者に対しては、単なる財産移転に留まらず、財産から生ずる果実や利子を受益者に年金として定期的に引渡したり、あるいは財産を一定期間保管あるいは運用した後に適切な時期に引き渡したりなど、受託者には単なる財産移転の中継者としての役割以上のものが期待されている。そこには受益者のための財産管理を中心として適切な監護をも託する遺言者(委託者)の意図が観取される。この内包された意図を実現するための法的仕組みと解釈の一つが、遺言者の意思解釈から、期限や条件の限定の中に処分行為を構成するなどのテクニックであり、こうした限定が、信託遺贈を後見的財産管理に近づけることがわかった。さらに、こうした限定は、同時に、託された財産の処分が完了する前に受益者が死亡した場合の財産の行方について決着する根拠となりうることもわかった。 加えて、この後見的機能を焦点に、英米法trustとの比較検討を行った。このとき、ローマン・ダッチ・ローの受容の上に英米法を継受し、現在も両者の共存の中で法システムを駆動する南アフリカの信託理論を読み解きの軸にし、遺言信託と信託遺贈fideicommissumの対照から、英米法と大陸法の機能的な接合点と溝を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでのところ、研究計画に大きな支障を来すような事由は発生しておらず、研究はほぼ予定通り進められている。次年度の研究に向けての資料調査・収集も順次平行して行ってきた。成果についても、一部は研究会などで報告し、さらに論文の形で刊行すべく作業を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に大きな変更はなく、今後も信託遺贈の各論的課題に取り組み、順次成果をまとめてゆく予定である。
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