従来、ローマ法の信託遺贈は、遺贈の一種の補完として理解されてきた。しかし、「学説彙纂」を検証すると、信託遺贈解釈は間接的処分や擬制的解釈にまで広げられ、こうした技法は無効な遺言の救済にも活用されていた。信託遺贈の介在は、遺言/無遺言の区別を形式ではなく解釈が担うこと許し、遺言相続制度の形式主義を内側から揺るがすことになったといえる。信託遺贈がローマの遺言相続制度を意思解釈中心へと革新させたことが確認された。 また、保護を要する受益者への信託遺贈の場合、受益者の財産管理に伴う条件などにより、効果として受託者に受益者の適切な監護も託すことができ、信託遺贈を後見的財産管理に近づけうることが検証された。
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