本研究は、住民自治論と原告適格論の接合を図ることによって、住民自治にとどまらない「住民」論を再構築することを目指し、法制度・判例研究、歴史・隣接諸科学研究および日仏比較法研究という三つのアプローチから研究を行った。その結果、伝統的な個人と国家の二元的構造をなお自覚しつつも、住民個人―住民集団―社会―国家(立法・行政・司法)の関係に正面から取り組む必要があること、また、市町村間の広域連携と同時に市町村内部の共助が進展するなかで、一定の区域を基礎とする地方公共団体とその住民という概念、ひいては住民自治の理念が新たな局面を迎えていることが明らかになった。
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