研究課題/領域番号 |
25380026
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
増井 良啓 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (90199688)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 多国間税務執行共助条約 / OECD税務長官会議 / BEPSプロジェクト |
研究概要 |
予定どおり、本年度は、国際的なフォーラムにおける動向の巨視的分析をすすめるとともに、租税条約上の情報交換に関する個別的分析を行いました。 まず、国際的なフォーラムにおける動向については、OECD税務長官会議(Forum on Tax Administration)の報告書の発出した多数の報告書を整理するとともに、税源侵食と利益移転(Base Erosion and Profit Shifting, BEPS)プロジェクトに関連して、とりわけ自動的情報交換の進展に向けた急速な展開について情報の収集と事態の把握につとめました。また、関連する内外の書籍を系統的に購入し、大学図書室に配備しました。法形成の現場との接点においては、2013年11月下旬にクアラルンプールで国際租税協会のシンポジウムに招待パネリストとして参加し、12月初頭にパリでBEPS行動計画15に関するOECD非公式会合に出席し、2014年2月初頭にシンガポールで米国FATCA(外国口座税務コンプライアンス法)に対応する政府間協定に関するシンポジウムに参加するなど、各国専門家との意見交換によりこの問題に関する各国の対応の現況を把握することにつとめました。 つぎに、租税条約上の情報交換に関して、多国間税務執行共助条約に関する専門家委員会の注釈を読み込み、主要部分を抄訳して、2014年3月上旬に、日本租税研究協会の国際課税研究会において報告しました。この作業によって、個別の解釈論に関する起草者の考え方を明らかにすることができたばかりでなく、相互主義や比例原則、納税者の権利保護といった原則が同条約の根幹を成していることを明らかにしました。その成果は近く公刊予定です。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に予定していた2つの作業のうち、まず、国際的なフォーラムにおける動向の巨視的分析については、この時期にBEPSプロジェクトが本格的に始動したこともあり、その分析に多くの時間を必要とすることとなりました。結果的にみて、BEPSプロジェクトとの関係で発出される種々の公的報告書およびそれに対する世界各国の専門家からのコメントを読むことによって、透明性と情報交換に関する動態の把握が進みました。次に、租税条約上の情報交換に関する個別的分析については、予定どおり、多国間税務執行共助条約に関する専門家委員会の注釈の検討をすることができました。
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今後の研究の推進方策 |
計画どおりに進めます。とくに、今後もBEPSプロジェクトの進展が予想されるため、国際的なフォーラムにおける動向の巨視的分析にさらに注力します。この分野において英語圏の二次文献の増加が著しいこともあり、限られた予算の中で、書籍の購入にあたってはより強い選別を行います。各国専門家との意見交換の機会は、できる限り増加したいと考えます。
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