平成27年度においては、クロス・ボーダー取引に焦点を当てた消費税研究プロジェクトの取りまとめをおこなうべく、複数の論文を作成し、税務関係の専門誌に掲載した。また、ニュージーランドに出張して、日本における消費税の改正とニュージーランドで検討されているGST改正に関して、内国歳入庁の幹部との意見交換を行った。また、同国の大学におけるGST研究者と今後のアジア・太平洋諸国の消費税制の国際比較研究の深化に向けた相談を行った。 平成27年末には、軽減税率の導入とインボイス方式導入に向けた税制改正の内容が明らかになったので、改正内容について、IBDFのVAT Worldwideというデータベースのアップデート作業を行った。さらに、日本税理士会における消費税に関する研究会に参加し、消費税が経済活動に及ぼす影響についての基礎研究を開始した。 3年間の研究期間全体を通して、当初予定した国際比較研究も日本の消費税制の在り方についての検討も、順調に行うことができたが、この背景には、科研費の補助によって、ヨーロッパ・東南アジア・オセアニアへの出張が可能になり、現地の研究者・実務家・当局者と議論する機会が持てたことがある。また、日本において、国境を超える役務取引に対する消費税課税に関する税制改正が行われたほか、軽減税率をめぐる議論が活発に行われ、国際的にもOECDのVAT/GST Guidelineが作成されるなど、現実のリアルタイムの動きが研究課題と深く結びついていたこともラッキーであった。今後とも、日本の消費税制につき、基礎研究と国際比較研究をさらに深めていきたいと考えている。
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