研究課題/領域番号 |
25380029
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
君塚 正臣 横浜国立大学, 国際社会科学研究院, 教授 (80266379)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 統治行為論 / 客観訴訟 / 非訟事件 / 司法権 |
研究概要 |
司法権・憲法訴訟の研究を進め、平成25年度は以下の論説を公表した。 「統治行為論再考――《ある》が《ない》」横浜法学22巻1号33-77頁(2013年9月)では、公法学では多くの議論があった統治行為論につき、検討を行った。基本的には、憲法訴訟に限定した問題ではなく、司法権行使の例外か否かの問題であるところ、国家存立・憲法秩序維持のための例外としてこの概念は認めざるを得ないが、実際にこれを理由に司法判断を否定する場面が想定し難いことを指摘した。 「司法権定義に伴う裁判所の中間領域論――客観訴訟・非訟事件等再考(1)」横浜法学22巻3号143-169頁(2014年3月)では、議論の多かった日本国憲法76条「司法権」の定義を再考し、理論的概念構成を是とし、特に、佐藤幸治説の妥当性を確認する結果となった。この上で、これに従えば、「司法権」ではないが、裁判所に役割が付与されている客観訴訟・非訟事件等についての検討を,今後進めることとしたい。 なお、「対審権と伝聞証拠――The Story of Crawford v. Washington」大沢秀介=大林啓吾編『アメリカ憲法判例の物語』411-440頁(成文堂、2014年4月予定)については本年度内に原稿を提出したが、刊行は次年度となったため、次年度に業績として報告する。 また、本年度には、「続・憲法保障システムとしての選挙制度考」横浜国際社会科学研究18巻6号1-23頁(2014年2月)、判例研究「空知太訴訟再上告審判決」新・判例解説Watch(速報判例解説)12号11-14頁(2013年4月)、「同性愛者に対する公共施設宿泊拒否」長谷部恭男=石川健治=宍戸常寿編『憲法判例百選I』〔第6版〕66-67頁(2013年11月)、書評「南野佳代編『法曹継続教育の国際比較』(日本加除出版、2012年)」ジェンダーと法10号154-155頁(2013年7月)なども公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大きなテーマが確定している中、その中で執筆すべき論題もいくつかに確定しており、これを順調に執筆することができた。但し、本年度は、横浜国立大学大学院国際社会科学府・研究院改組初年度であるところ、この主要委員会である学務・広報委員会の委員長を拝命し、かつ、法曹実務専攻内で法科大学院認証評価準備委員長も兼任したため、非常に忙しい日々を過ごした。これが、予定を超えて業績が蓄積できなかった理由である。
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今後の研究の推進方策 |
「司法権定義に伴う裁判所の中間領域論――客観訴訟・非訟事件等再考(2)」を執筆し、客観訴訟・非訟事件などについて、憲法上許容される理由を確認、もしくは許容されない理由を指摘することがまずは必要である。この後、表現の自由の合憲性判断基準である過度に広汎性ゆえ無効の法理などに検討を進め、司法権・憲法訴訟における現在まで執筆のないテーマについて論考を公表していきたい。但し、平成26年度は法曹実務専攻長に就任するため、本年度に増して多忙である。計画的な研究計画の遂行が肝要である。 なお、平成26年度には法学教室にて「演習 憲法」を担当することとなった。ここでは、司法権や憲法訴訟論に関するテーマを多く取り上げることとなる。研究成果としては報告しないが、実質的には研究成果のエッセンスでもある。
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次年度の研究費の使用計画 |
本務校の個人研究費の消化を優先したため。また、学内業務が忙しく、この分、旅費の支出が思いのほか少なくなってしまったため。 書籍、旅費により消化する。
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