研究課題/領域番号 |
25380032
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
山崎 友也 金沢大学, 法学系, 准教授 (80401793)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国民主権 / 民主主義 / 民主政(制) / 国民としての義務 |
研究概要 |
本年度前半は,国民主権原理に関する日本の文献を網羅的に分析し,とりわけ「主権者」として「国民」は権利以外に対国家の義務(責務)(以下,「義務」)を有するかについて芦部信喜・佐藤幸治の杉原泰雄の各説について検討した。芦部のいう「主権」の「権力性の契機」「正当性の契機」はそれぞれ憲法制定(改正)への国民の直接参加,とりわけ国民代表としての立法府を通じての国民の間接参加を意味するが,いずれも国民の何らかの「義務」を内包するものとしては考えられていない。佐藤説の主権概念においても国民の「義務」を含む指摘を発見できなかった。一部で主張される民主政の共和主義的構成に理解を示しているが,自説との直接的関係を認めているわけではない。杉原説も「多数派の人権保障のための人民主権」と性格づける以上,国民(人民)主権から直ちには主権者としての国民の「義務」を導けない。主要学説の国民主権原理から直接に「義務」を引き出すことは困難だと結論し得る。 本年度後半は,英・米・独の各国における国民(人民)主権と「義務」との関係について検討を試みた。この3国の間では「主権」概念がそもそも異なる上に,特に英国においては主権が国会(国王含む)にあるとされるなど,日本との直接比較を慎重に検討せざるを得ないことに改めて留意した。もっとも,「主権」概念とは別に「民主主義」概念に共和主義的解釈を加えることで国民の対国家の義務(責務)を導く憲法解釈論は少なからず確認されたが,あくまで実定憲法典(憲法的法律含む)に国民の義務(責務)規定がある場合での指摘であることにも注意が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書「平成25年度の研究計画(詳細)」において同年度前半に実施するとした日本の憲法学説のいう国民主権原理と国民の義務との関係についての検討をほぼ終えることができた。また,同年度後期に実施するとした英・米・独・仏各国の国民主権(民主主義)概念と国民の負うべき義務との関係についても,おおまかな概観を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度後期の実施した研究においてより詳細な検討を行うべき仏・独の各国における国民の労役提供義務と実定憲法との関係について研究者相互の意見交換を北陸公法判例研究会等を利用して実施する。また,国民の労役提供義務を正当化する憲法理論の文献収集を出張等を利用して強化する。紀要等で研究経過を随時細分化して公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費(書籍)の実購入額が当初の見積額より6,000円下回ったため。 次年度の物品費に充てる。
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