研究課題/領域番号 |
25380033
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
田中 祥貴 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 准教授 (20398548)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 委任立法 / 英国議会 / 参議院 / 行政統制 / 憲法保障 |
研究実績の概要 |
本年度の研究計画は、委任立法統制に関わる英国議会制度の「運用」を調査研究する予定であった。すなわち、前年度における英国議会の制度研究を踏まえて、その制度を実効化する運用方法を、比較法的な視点から考察し、我が国の国会改革に際して、一定の示唆を得ることが目的であった。 もっとも、今年度は、参議院憲法審査会と研究交流を行う機会に恵まれたことから、この機会を最大限に活用するべく、英国議会と参議院の比較研究を、理論研究に止まらず、実務レベルでの研究内容を担保することに傾倒することとなった。ただし、当初、かかる日英の制度比較研究は、次年度に実施する予定であったことから、計画の一部を前倒して実施することで調整を図った。 このような経緯から、本年度は、英国の議会制度を模範として、我が国の参議院を基軸とした委任立法の統制に関わる制度展開を行う場合に生起する実務的な論点を精査することができ、我が国の議会制度の実態を踏まえた研究を深めることができた。これは、今後の本研究の遂行において、非常に重要な意義を有する。すなわち、本研究における行政統制のための制度設計が、参議院の制度的構成・人的構成を踏まえて、果たして実現可能であるのか否かについて検証し、今後の研究課題を明らかにすることができたのである。 本年度の研究を通じて、参議院の制度的構成の問題は、現行制度の再編によって相当適度の現実化が可能であること、また、参議院憲法審査会との情報交換によって、今後、参議院が行政統制の基軸を担うことに相当の合理性があることが確認できた。 なお、かかる研究成果の一部について、平成26年度の全国憲法研究会総会で研究報告を行い、その内容は、平成27年度の憲法問題26号(三省堂)にて刊行される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は前年度の「制度設計」の研究から「制度運用」の研究へと軸足をシフトする予定であった。そして、その英国議会研究のため渡英し、現地での「制度運用」をめぐる情報収集を実施する予定であったが、前述の通り、本年度は参議院との研究交流を行う機会を得たことから、本年度と次年度の研究計画の一部が前後することとなった。もっとも、それは次年度の研究計画に含まれていた内容であるから、研究計画の進捗状況が遅滞した訳ではない。むしろ、本来なら得ることができなかった参議院からの貴重な実務的情報の提供を受けることができ、本研究の計画自体は、むしろ順調に進展しているものと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、次年度実施する予定であった日英の制度比較研究の一部を前倒ししたことで、渡英した上での現地調査が未実施の状況にある。そこで次年度は、この英国議会における制度の運用状況、すなわち、英国上院において行政統制を実効化するために如何なる運用方法がとられているのか、その詳細を英国現地にて調査研究する予定である。そして、かかる制度運用の研究を踏まえたうえで、議会制度の日英比較研究をさらに深化させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、参議院憲法審査会との研究交流の機会が得られたことから、この貴重な機会を最大限活用すべく、本年度と次年度の研究計画を一部前後しての研究活動となった。このため、本年度に実施する予定であった渡英しての現地調査の実施を、次年度に延期せざるを得ず、かかる海外渡航を含む調査費用が未消化となったことから、次年度使用額が生じる結果となった。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究にとって、英国議会制度の運用実態を把握するための現地調査は不可避である。本年度は、上記のやむを得ない事情から実施できなかったが、次年度においては、本研究の実質化のために、是非とも実施する必要がある。そこで、本年度の研究経費残額を平成27年度請求額とあわせて外国旅費として使用する。
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