研究課題/領域番号 |
25380036
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中川 丈久 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10252751)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 行政的手法 / 法実現 / 行政調査 / 行政訴訟 / 消費者法 |
研究実績の概要 |
行政法上の諸法理を,他の法領域と共通化したり,相互関係を明らかにしたりすることについての具体的成果をあげることができた。 まず,行政法的手法が,民事法的手法や刑事的手法と絡み合いながら,各種の法領域を作り上げている様子を立体的に示すことを行った。具体例としては,消費者被害救済の分野における民事法的救済と行政法的救済の具体的制度設計を取り上げた。そして,その検討経験をより一般化する形で,行政法における法実現のあり方を,民事法や刑事法のそれと比較する形での総論的な説明方法を開発し,研究成果として公表した。以上のように,法領域相互の「立体的な組合せ」についてであり,行政法,民事法,刑事法を基軸三法として法の仕組みを読み解く手法を示したものである。 この時期はこのほか,法領域相互の「横の比較を通じた理論の見直し」も行った。次のとおりである。第一に,行政訴訟のいわゆる訴訟類型論について,民事訴訟理論と詳細に比較することを通じて,その特殊性とされてきた抗告訴訟の諸概念が,民事訴訟で説明できるものであるか,または,存在しないものであるのではないかという検討にとりかかった。第二に,行政調査については,民事裁判や刑事裁判における証拠収集と比較する形で,行政調査についての実定法の制度があまりに不十分であることを指摘すること,またいわゆる非開示特権の導入の是非についても,これをどう論じるかの検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
消費者被害の救済のための民事的行政的救済については,座談会形式ではあるが発表の機会があったこと,行政法における法実現の一般論化については,論文として公表することができたこと,行政訴訟および行政調査の民事訴訟等との比較による理論の見直しについても,公表に向けての準備に入れていることのゆえである。
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今後の研究の推進方策 |
行政訴訟の訴訟類型論,および行政調査の制度不備については,論文発表をおこないたい。また,行政訴訟については,理論的検討のみならず,学説史や判例分析の面からも検討を進めることとしたい。さらに,訴訟類型のみならず,訴訟における本案審理のあり方について,体系化した理論的記述を行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
書籍購入予定費用について,ネット上で無料配布(アカデミック用)があったため,その分の経費がかからなかったが,他方で,海外からの購入分については本年3月までに届かず来年分で対応することになった。また,本年取り扱ったテーマのうち行政訴訟については,もともと文献を多く持っていたので,例年よりは購入数が少なかった。このほか,予定していた海外出張について,他の共同科研による海外出張を行った後,急な学内用務のために再度の出張に行く時間的余裕がなくなるという想定外の事態となったため,今年は見送りとし,来年度の夏に企画し直すこととした。なお,今年は日本語での研究成果をきわめて多数行ったため,英文化する時間をとることができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度においては,夏に長めの海外出張をおこない,昨年分とあわせて調査を行うこととしている。また,研究成果の英文化については,来年度以降にまとめて行うこととするので,そのための経費の取り置きをする必要がある。
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