研究実施最終年度は、研究の総括として、全体研究会を2回開催し、研究成果の公表を目的に、外部研究者を含めた知見の総括を行い、次年度秋を予定している書籍公刊に向けた研究作業を行った。 すなわち、現代議会法の理論、制度、及び歴史に関する各国の最新の議論を重点的に検討・紹介することを目的として、テーマごとにある国の具体的な改革論議・制度改革を念頭に置きつつ、他の諸国における類似のテーマについての議論状況についても、可能な限り触れるという基本的な構想のもと、主として次のような項目・テーマに基づく研究報告を行った。具体的には、現代議会法理論の展望についてバイロイト大学のオリバー・レプシウス教授の見解につき検討し、それを踏まえて私化(Privatisierung)時代の議会立法のあり方について検討を加えた。また、このようなドイツにおける理論的展開と比較する形でフランス議会法の現代的問題について専門家からの意見聴取を行い、並行して、議会の自律組織権の限界にかかわる理論的検討、および議会と内閣の関係に関する実務的視点からする検討、および議院内閣制の審議システムの形成に関わる憲法史的検討を行った。 また、第二の研究の柱として、議会統制をめぐる理論と実践について取り上げ、議会統制の拡大に関して議会の情報権と共同決定権とを区別するクリストフ・メラース教授(フンボルト大学)の見解、およびクリスチャン・バルトホフ教授(同)の見解につき検討を加え、この観点から、議会権能の拡大と秘密保護に関するイギリス・ドイツの比較を上田が、またイギリスにおける議会統制権の現代的展開について木下が、それぞれ理論的に検討した。 さらに、第三の研究の柱として、ドイツ第二帝政後期の国法学における君主政と議会に関する比較憲法史的考察、および明治憲法下における政官関係と議会に関する憲法史的考察を行い、そのための研究会を開催した。
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