研究課題/領域番号 |
25380043
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
横大道 聡 鹿児島大学, 教育学部, 准教授 (40452924)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 特定秘密 / 秘密保全 / 国家安全保障 |
研究概要 |
本年度は、第1に、「市民生活の自由と安全」研究会において、「国家安全保障に関する秘密保全のあり方について」という問題提起を行い、永野秀雄・法政大学教授、板橋功・公益財団法人公共政策調査会第1研究室長とともに、国家安全保障問題について議論し、検討を深めた。 報告では、現在の議論状況は、人権論(表現の自由、知る権利etc.)の見地から、秘密保全法制それ自体に批判的な議論が中心であるところ、より精緻に市民の知る権利と秘密保護の必要性の問題を考えなければならないとして、①秘密保全の必要性という問題局面、②秘密の「指定」の問題局面、③秘密の「管理」の問題局面、④秘密の「開示」「提供」の問題局面、⑤秘密と「処罰」の問題局面、⑥秘密と「裁判」の問題局面などに分節して、それぞれ考えなければいけない旨を報告した。なお、この研究会の成果は、2014年度中に公表される予定である。 第2に 中国・延辺大学で開催された、Tumen River Forumにおいて、「国際的な法開発と法協力――憲法学の立場から」という報告を行った。この報告は、他国からの法制度の押し付けという問題を検討したものであり、特定秘密保護法がアメリカからの押し付けであるという議論に対する一つの応答という側面を有しているものである。なお、この報告のもととなる論文は、当日配布された冊子に掲載しているが、2014年度中に国内紀要に公表予定である。 第3に、比較法的見地から、秘密保全法制を考察するため、イギリス行政法の専門家である和泉田保一山形大学准教授を招聘し、研究会を開催した。 第4に、「国家秘密と自己統治の相克――ウィキリークス問題を素材として」という論文を執筆した。この論文を収録した書籍は、2014年度中に刊行予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では、平成25年度は、「国家安全保障に関する秘密保全法制の全体像の正確な把握」を試みる予定であったが、2013年12月、日本において特定秘密保護法の制定前後において、国家安全保障に関する秘密保護法制を考えるにあたって必要な視点を明らかにする必要があると考えたため、次年度以降で研究予定のものを本年度で検討したものもあるが、おおむね研究は順調に進捗している。 なお、論文執筆と成果物の刊行とのタイムラグの関係で、本年度は論文の公表がないが、本年度の成果物は次年度以降に公表される予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は、まず、学会報告において、アメリカにおける秘密保全法制の全体像を明らかにする予定である。 そのうえで、日本における秘密保護法制をめぐる議論において有益と思われるアメリカの法制度の紹介と検討を行う予定である。具体的には、例えば、刑事事件において被告人の弁護などにとって重要となる情報が機密情報である場合 、かかる機密情報を裁判において開示するか否かの最終的な判断を政府に委ねつつ 、開示しないと政府が決定した場合には、起訴の取下げまたは裁判所が適当と認める命令に従わなければならない、という仕組みについて規定した、1980年の機密情報刑事手続法(Classified Information Procedure Act)の概要紹介などを行う予定である。 また、アメリカ以外の国の制度を理解し、比較法的な分析を行うために、フランスやイギリス法を専門とする研究者を招いて、研究会を開催する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画では、アメリカ合衆国に調査に赴く予定であったが、諸般の事情により、次年度以下に変更したため、その分の費用が余ることとなった。 今年度は、研究会を開催して外部専門家を招へいする予定である。また、夏季休業中にアメリカ合衆国に調査に行く予定であり、次年度使用額は、それらに充てる予定である。
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