研究課題/領域番号 |
25380043
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
横大道 聡 鹿児島大学, 教育学部, 准教授 (40452924)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国家安全保障 / 秘密保全 / 特定秘密 / 機密情報 / 憲法 |
研究実績の概要 |
本研究は、国家安全保障に関する秘密保全のあり方に注目が集まっている近年の状況下において、憲法的観点から秘密保全法制度を分析・評価・構想する必要性・緊急性が高まっているという現状認識のもと、アメリカ合衆国の法制度と議論を検討素材にしながら、そのあり方について多角的に検討することによって、日本への示唆を得ることを目的とするものである。 上記の目的を達成するために、本年度は、 ①秘密保全と自己統治・民主主義との関係のあり方について、メディアによる公表行為に対する処罰に着目して考察する、横大道聡「国家秘密と自己統治の相克――ウィキリークス問題を素材として」大沢秀介編『フラット化社会における自由と安全』(尚学社、2014年)142-157頁、 ②特定秘密保護法制定をめぐる議論についても言及した、横大道聡「国際的な法整備、グローバルな法協力――憲法学の視点からの一考察」法学論集(鹿児島大学)49巻1号(2014年)1-13頁、 ③国家安全保障に関する国家秘密を裁判で扱うときの比較検討素材としてアメリカの関連する連邦法等を翻訳した、横大道聡「(翻訳)機密情報刑事手続法(米国)」法学論集(鹿児島大学)49巻2号(2015年)283-316頁、を公表した。 また、国家安全保障に関するアメリカの秘密保全法制の全体像について、①比較憲法学会にて「アメリカにおける国家安全保障に関する秘密保全法制」と題した報告を(2014年 10月、慶應義塾大学)、また、特に議会統制に焦点をあててアメリカの法制度の概要を検討した、「アメリカにおける国家安全保障に関する機密情報と議会統制」と題する報告を、国立国会図書館・調査及び立法考査局・政治議会課にて行った(2015年3月)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画では、国家安全保障に関する秘密保全法制度に関して、 (1)国家安全保障に関する秘密保全法制の全体像の正確な把握 (2)秘密保全法制と自己統治・民主主義との関係という理論的研究 (3)秘密保全法制に関する人権論的観点と権力分立的観点からの研究 という多角的な分析視点から、アメリカでの議論を整理・検討を行い、日本への示唆を得ることを試みることを課題としていた。 当年度の計画では、主に(2)について研究を進めていく予定であったところ、上記のとおり、これに関する論文「国家秘密と自己統治の相克――ウィキリークス問題を素材として」のほか、(1)に関わる学会報告、研究会報告をそれぞれ行い、また翻訳「儀蜜情報刑事手続法」を公表した。さらに、海外調査を行い、必要な資料・文献を入手するとともに、研究者等との新しいつながりを構築することができた。以上を総合的に見て、当初の計画以上に進展していると評価しうるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、権力分立的観点からの研究に取り組みたい。その際に重要となるのは、国防問題に関する大統領権限とその統制に関する議論の整理と把握である。本研究では、大統領権限を強調して大統領の単独権限行使を憲法上要請する議論と、議会や裁判所との協働を強調する議論とを比較対照させながら、国家安全保障に関する秘密保全問題の分析を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費を抑えたために、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
抑制していた物品費の分を、当初使用計画に基づいて適正に執行する予定である。
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