本研究は、国家安全保障に関する秘密保全のあり方に注目が集まっている近年の状況下において、アメリカ合衆国の法制度と議論を検討素材にしながら、そのあり方について多角的に検討し、日本への示唆を得ることを目的とした研究である。研究期間全体を通じて、①国家安全保障に関するアメリカの秘密保全法制の正確な把握と紹介、②秘密保全と自己統治・民主主義との関係のあり方の考察、③秘密漏洩に対する処罰やマスメディアによる公表行為の処罰等に関する人権論的観点からの検討、④秘密保全に関する執行府と立法府、裁判所との間の適切な役割分担と協働のあり方に関する権力分立的観点からの検討を行い、当初目的を達成した。なお、平成27年度の業績は次のとおりである。 (1)「国家秘密と自己統治――アメリカにおける機密情報漏えいをめぐる議論状況」と題する報告をCS法制研究会(於:アルカディア市ヶ谷)にて報告(2015年12月5日)。 (2)警察政策フォーラム「変容する国際テロ情勢への対応~「伊勢志摩サミット」に向けて~」というパネルディスカッション(於:東京・グランドアーク半蔵門)にて、パネリストを務めた。その概要は、警察学論集69巻1号(2016年)62-77頁に掲載されている。 (3)昨年度行った学会報告が学会誌に掲載された。 横大道聡「アメリカにおける国家安全保障に関する秘密保全法制について――三権の役割・機能を中心に」比較憲法学研究27号(2015年)23-45頁。 (4)本研究のテーマと深く関連する書籍である、大沢秀介監修、山本龍彦・横大道聡・大林啓吾・新井誠編『入門・安全と情報』(成文堂、2015年)の編集作業を行うとともに、執筆も行った。 (5)本報告のテーマに関する調査を行った(ドイツ・イギリス)。ドイツでは現職判事からコメントをいただき、イギリスでは、公法・憲法学専攻の教授からコメントをいただいた。
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