研究課題
平成26年度においては、平成27年3月23日(月)から同年3月31日(火)までの間、研究代表者の大阪市立大学法学研究科の渡邊賢と、連携研究者である大島佳代子同志社大学政策学部教授がアメリカ合衆国ワシントンDCに所在するアメリカン大学に赴き、アメリカ合衆国連邦政府を含めた合衆国全体における公務員制度を取り巻く現状と、公務員制度のもとで展開されている団体交渉制度の改革に関する動向の概略につき、アメリカン大学において資料収集を行うとともに、3月25日にアメリカン大学のJefferey Lubbers教授の面談し、連邦政府における公務員の団体交渉の仕組みと、合衆国全体において発生している公務員の団交制度に対する政治的なバックラッシュの状況の原因等についてインタビューを行った。その結果、連邦公務員の団体交渉制度は、例えばカリフォルニア州などと比較すると協約締結権の点で限界があるなど、合衆国においてこの面でいわば「進歩的」な州と比較すると組合の団交権保障の点で限定的であること、団交制度に対して現在発生している政治的なバックラッシュは民主党対共和党の対立という側面に由来するものであることが大きいこと、しかし公務員の年金額が嵩んでいることの原因が公務員の団体交渉によるものであると考えられていることを教示いただいた。年金制度については、各州とも法律で定めているものなので、団体交渉制度と無関係ではないかと質問したところ、法律的にはその通りだが、団交の中で政府が年金改革を約束するなどによって事実上団交における約束が年金制度のあり方を拘束する面があることを教授は指摘された。なお、渡邊が団体協約制度と委任禁止原則の関係について現在研究を進めていることを述べたところ、委任法理が各州で異なる点に注意を向けるようアドバイスを受けた点は研究代表者にとって有益であった。
2: おおむね順調に進展している
すでに提出した計画書においては平成26年度の研究計画・方法として、ドイツ・フランスの公務員制度について調査、研究を行うものとしていたところ、独仏を担当する予定の連携研究者の事情によりこれを変更し、研究代表者である渡邊と連携研究者である大島同志社大学教授がアメリカン大学に赴き合衆国連邦政府の公務員の労使関係等について非常に有益な調査することができたことから、平成26年度の研究は、想定していた研究計画全体に照らして、概ね順調に進展させることができたと判断する。
平成27年度は、ドイツとフランスの公務員制度について現地調査とそれに基づく研究を行う。具体的には、ドイツ・フランスに赴き、それぞれの国における公務員制度のもとでの団体交渉の制度と実態を調査する。
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ジュリスト増刊新・法律学の争点シリーズ8行政法の争点
巻: ジュリスト増刊新・行政法の争点シリーズ8 ページ: 192,193
法学雑誌
巻: 61巻1・2号 ページ: 58,71