研究課題/領域番号 |
25380046
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
首藤 重幸 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (00135097)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 原発行政訴訟 / 原発民事訴訟 / 基本設計論 / ショーラム原発 / 福島第一原発事故 |
研究概要 |
3か年の研究計画の初年度は、「原発行政訴訟死滅論の再検討」という研究テーマを設定した。具体的には、福島第一原発事故後に提訴された原発訴訟の訴訟形態の中心が、従来の行政訴訟から、電力会社を被告とする民事訴訟に移行してきていることの意味を探求し、これからの原発訴訟の動向を展望しようとするものである。 原発行政訴訟のメリットとされてきた諸点は、行政訴訟で採用される(審査範囲を極めて限定する)「基本設計論」のデメリットに比べれば、意味のあるものではなく、原発訴訟の中心が民事訴訟に移行するのは当然であることを、「これまでの原発行政訴訟における裁判所の審査方法は、福島第一原発事故の発生の原因の一つになっているのではないか」という問題意識のもとで、改めて検討した。 さらに、今回の福島第一原発事故の経緯から、原発の重大事故時における住民の緊急避難計画の策定が、原発運転の許可要件になっていないことの問題性が初めて認識された。このこととの関連で、緊急避難計画の不十分さにより、完成しながら廃炉となったアメリカのショーラム原発の建設計画から廃炉までの歴史を検討する作業を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初設定した初年度の研究目標は、「原発行政訴訟死滅論の再検討」というテーマであり、原発訴訟が行政訴訟という訴訟形態で審理されてきたことの意義と問題を検討すること(このことは、原発訴訟への従来の行政法学の取り組みの不十分さを析出する作業でもある)であり、これについては、いまだ未完成な部分もあるが、研究の一部を論文として公表することができ、一応の目標を達成できたと考えている。 上記の研究過程において、福島第一原発事故で問題となった浪江町町民の悲劇(放射能汚染レベルが高い地域への避難)の深刻さを再認識したことで原発と緊急避難(計画)という問題の重大性に気付き、この点の研究に着手することになった。緊急避難計画の不十分さ(地形的に緊急避難は不可能)により完成した原発が廃炉とされたアメリカの事例についての検討も開始しており、成果が出せる前提ができたと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
これからの原発行政研究にとって、重大事故時の緊急避難というテーマが重要であることに気づいたので、このテーマについての豊富な事例と研究成果があるアメリカの状況を詳細に研究してゆく。 さらに、本研究は「脱原発の法的問題」も研究テーマであることから、脱原発をめぐって複数の原発訴訟が提起されているドイツの問題状況を検討してゆく。このドイツ研究のために、ドイツの現地調査をおこなうことにしている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
様々な形態の脱原発訴訟が提起されているドイツについて、現地調査を行う予定であったが、その調査が次年度に延期され、それに関する支出がなくなったこと。 2014年5月23日から6月1日までの10日間、ドイツ、フランスでの現地調査の経費に使用する。
|