研究課題/領域番号 |
25380046
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
首藤 重幸 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (00135097)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 原発訴訟 / 科学裁判 / 高浜原発訴訟 / 科学哲学 / 原発避難民 / 自主避難権 |
研究実績の概要 |
高浜原発訴訟(民事訴訟)の第一審判決が、従来の通常の民事差止要件とは異なる判断枠組みで、運転差止を認める判断を示した。これを受けて、改めて原発裁判における司法審査の方法(民事訴訟・行政訴訟)の検討を、「科学哲学」における科学の不確実性の議論も踏まえておこなった。 さらに、上記の第一審判決の判断枠組みがドイツの原発裁判(行政訴訟)の判断枠組みと類似していることから、2014年5月にドイツでの現地研究調査をおこなった。ドイツでは、原発裁判に関与する弁護士のみでなく、連邦行政裁判所の裁判官からも原発裁判の判断枠組みについての貴重な情報・学識を得ることができた。 そして、上記の科学哲学の検討成果やドイツでの現地調査で得た知見をもって、日本弁護士会連合会が2014年10月に函館市で開催した第57回人権擁護大会シンポジウムに、パネリストとして参加するとともに、同月に早稲田大学で開催された日仏シンポジウム「原発災害と人権」でも、パネリストとして研究報告をおこなった。さらに同年11月には京都で開催された民科法律部会の学会総合シンポジウムでも、原発裁判と科学というテーマで研究報告をおこなった。 本年度は、原発裁判と科学というテーマを中心に研究をおこなったが、東京電力福島第一原発事故から4年をむかえたことから、この時点における同事故の原因究明や電力会社幹部への刑事責任追及等の現状と課題、そして原発避難民の救済をめぐる法律問題(自主避難権の議論を含む)についても検討をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
従来にない科学裁判の判断枠組みを採用したことから、「科学と裁判」を再度、「科学哲学」の成果や、ドイツの原発裁判(科学裁判)の手法を踏まえて、検討する機械をもつことができた。とくに科学哲学が示している成果を検討する機会を持てたことは、これまでの私の原発裁判の研究において欠けていると感じてきた部分のピースを埋めてくれるものであった。 さらに、原発事故から4年目の原発避難民のリアルな実情を知り、その救済にかかわる法律の構造と不備を明確に認識できたことも大きな成果であったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果は、その一部がすでに論文として公刊されているものもあるが、それらも含めて、最後の3年目の今期は、「原発裁判と司法審査-科学の不確実性を踏まえて-」、「脱原発と損失補償」(ともに仮題)というテーマで研究成果をまとめる作業をおこないたい。 そして、今回の科研費研究の重要な課題である、韓国、台湾等のアジアの法学研究者との原発研究ネットワークを形成したいと考えている(中国の研究者とのネットワーク作りは困難な状況がある)。日本以外のアジアの法学研究者においては、原発問題を法律学の観点からとらえる問題意識は極めて薄いように思われる。原発への賛成・反対は問うことなく、原発の行政法的統制に関心のある研究者が広く参加するネットワークを作りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査のための出張を予定していたが、調査受入機関の事情から調査時期が次年度に延期されたことで、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
延期していた現地調査のための出張を今年度に行うことで使用する。
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