研究課題/領域番号 |
25380047
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
西原 博史 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (10218183)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 比例原則 / 違憲性審査基準 / 法治国家 / 平等 / 社会的障害モデル / ドイツ連邦憲法裁判所 / ヨーロッパ司法裁判所 / 社会的排除 |
研究実績の概要 |
本研究は、伝統的な審査手法が空転しがちなリスク管理目的の規制において立法府に対する人権保障の実質を確保できるような違憲審査の理論的・実践的枠組を構築することを目的とする。その過程において本研究は、A 法治国家における立法に対する拘束の規範構造、 B ドイツ連邦憲法裁判所・ヨーロッパ司法裁判所で適用される比例原則の構造把握、 C自由と平等の権利内実の連関と区分、という検討領域を設定し、 (1) 立法者に対する憲法上の規律の拘束力のあり方、 (2) 違憲審査手法における事実問題と評価問題の区分、 (3) 事実認識の進展を法律違憲性の観点に再導入する方法、といった具体的な問題への解答を目指す。 平成26年度においては、前年度のドイツ比較法学会報告で一定レベルの論点整理に成功した、事実認識と価値評価のどちらを対象とする審査なのかに関わる違憲審査手法の理論的再構築枠組の提示――(2)問題――を手掛かりとするB課題への貢献を、ドイツにおいて発表可能な論文として整理し直した。すなわち、「比例原則」として通用している違憲審査手法においては、価値衡量を中心的課題とする方法(価値判断モデル=ドイツ連邦憲法裁判所)と、必要性審査を主要課題とする方法(事実認識モデル=ヨーロッパ・カナダ型)を軸に機能区分が可能であり、選択を意識化する必要があること、その際には、(3)問題をも体系的に解決可能であることが見えてきた。 さらに、C課題との関係でも、「間接的差別」概念を手掛かりとした憲法上の人権保障体系に関する最整理の理論的基盤が得られている。平成26年6月の国際憲法学会における分科会報告では、この問題を取り上げ、日本における平等権関連事件における違憲審査の進展が有し得る、これまで抽象的権利とされていた領域における主観的権利の実質化に関わる論点を整理することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年9月にドイツで行われたドイツ比較法学会報告と、そこにおける討論において、基本的な作業仮説の設定は一応の水準において行われ、平成26年度に発行されたドイツ語版の論文を作成する過程において、作業仮説の証明に関わる基礎作業は文献研究・判例研究の形で推敲することができた。 さらに、違憲審査基準の設定による裁判上の人権保障に関わる機能的目標設定の問題は、様々な実践的帰結を伴い得ることについても理解が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度のドイツ比較法学会報告を踏まえた平成26年度のドイツ語版論文によって、基本的な成果の構造はすでに見えてきている。上記(2)、(3)問題を軸としたB課題(ドイツ連邦憲法裁判所・ヨーロッパ司法裁判所で適用される比例原則の構造把握)については、日本語による論文を作成することによる国内の憲法学・裁判実務への最先端成果の紹介・普及を中心とした研究推敲が目指される。 さらに、平成26年6月の国際憲法学会報告を踏まえた平等権領域における成果を踏まえ、より体系性を備えた基本権保障枠組の再構築に関わる理論的貢献を、複数の方法で準備中である。一つは、日本語による、立法裁量概念を軸とした権利褒賞構造の明確化を狙う論文が作成中であり、さらには、社会的排除に関わる領域に向けて憲法上の平等権が及ぼし得る規範的機能を包括的に分析する研究を遂行している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果の第一次取りまとめに必要な事務的作業に充当するために、研究補助員手当の予算を組んでいたが、ドイツ比較法学会報告の作成に関わって理論的作業が先行し、取りまとめに必要なデータ処理に計画のズレが生じた。その結果、データ処理に関わる作業が平成27年度に繰り越される。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果の集約に向けた事務的な作業は、研究補助員の補助を得て、平成27年度中に完成させる予定である。
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