研究課題
本研究は、伝統的な審査手法が空転しがちなリスク管理目的の規制において立法府に対する人権保障の実質を確保できるような違憲審査の理論的・実践的枠組を構築することを目的とする。その過程において本研究は、A 法治国家における立法に対する拘束の規範構造、B ドイツ連邦憲法裁判所・ヨーロッパ司法裁判所で適用される比例原則の構造把握、C 自由と平等の権利内実の連関と区分、という検討領域を設定し、(1) 立法者に対する憲法上の規律の拘束力のあり方、(2) 違憲審査手法における事実問題と評価問題の区分、(3) 事実認識の進展を法律違憲性の観点に再導入する方法、といった具体的な問題への解答を目指す。平成27年度においては、特にB領域との関係で、平成25年ドイツ比較法学会報告で展開した比例性審査の構造把握に関する方向性のモデル化と選択基準の特定に関する理論を最終的な日本語論文として完成させ、違憲審査基準をめぐる論争に対してメタ次元で理論を評価するための基準を提供し、研究の成果として完成させることに成功した。また、C領域に関連して、人権侵害の認定に関して社会的排除に起因するものを取り込む枠組の構築に向けて研究を進める手がかりを得、今年度においては教育過程における排除という具体的事例との関係で理論的射程を測る研究を公にした。さらにA領域では、上記BおよびC領域における成果を織り込みつつ、法の支配・法治国家という概念の特殊現在的な意味を再構築する口頭発表を行い、今後、成果の取りまとめ段階に進むこととなる。以上を総括して、研究最終年において、A~C各領域において確実な成果が得られ、その本質的な部分は既発表論文として世に示されていると同時に、次の課題につながるものについては、一部を論文や講演等で発表しつつ、次の研究課題との接続に成功している。
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判例時報
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法学セミナー
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