研究課題/領域番号 |
25380053
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
上田 健介 近畿大学, 法務研究科, 教授 (60341046)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 政府統制 / 平議員 / 野党 / イギリス憲法 |
研究実績の概要 |
①日本における政府の責任追及過程の枠組みと実際について、2014年5月の全国憲法研究会で報告を行った(報告内容は「憲法問題26」に掲載予定である)。本報告(と論文)は、意外にも体系的に纏まったかたちでは紹介されていない日本の政府統制制度の現況について、コンパクトに整理した点に意義があると考えている。 ②ある書籍の企画の中で、日本国憲法下における議院内閣制の展開について概説を執筆し、その中で、「ウエストミンスター型モデル」に対する批判を取り上げて、それに対する応答を試みている(研究実施計画にあった、レイプハルトの再読の成果もわずかながら反映している)。一時期、「ウエストミンスター型モデル」はもてはやされ、それに対する批判もまた注目されたが、その後、議論が沈静化しているとみられる。本稿は、実際の制度を重視する憲法学の観点から、この議論を再検討しようとするものであり、議論を深化・進化させる意義があると考えている。 ③別の書籍の企画の中で、ここ十数年の日本の政党政治の展開を前提として、与野党の意義と政府に対する政治的なコントロールの在り方について執筆した。政府に対するコントロール、という論点の関係で、基本的な議論の整理の仕方は①と重複するが、若干、新たなトピックも取り上げている。 ④研究計画書にも掲げていた、政権交代時のスムーズな移行を可能とするための野党と公務員との事前接触ルールについて、イギリスのダグラス=ホーム・ルールの歴史と現状の紹介および日本への視座を考察した論文を、阪本昌成先生の古希記念論文集に寄稿した。 なお、①~④は、いずれ2015年度中に公刊される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日本の実証研究について、聞き取り調査があまり進んでいない。イギリスの研究についても、議会の現代化の動きのフォローが十分にできておらず、また、本年5月の総選挙を前の実情を、今年度の冬から春までの間くらいに渡英してみることができればと考えていたが、現地調査が叶わなかった。 依頼原稿や自治体での公的活動が増えており、本務校での学内行政と合わせて、纏まった時間(とくに渡英するための)が確保しづらくなっているためである。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、さらに(当初想定していなかった)重要な公務が入ることとなり、研究に割くことのできる時間やリソースが減ることとなったので、日本の実情に関する大規模な聞き取り調査の実施は厳しくなった。そこで、できるだけ政党・議会関係者への個別的なインタビューを行うことで、次への研究の下準備を行いたい。他方、イギリスの実情については、日本からでもアクセス可能な豊富な文献に当たることで、フォローアップを行うとともに、早期からスケジュール調整を行うことで、今年度中に1度は現地調査を実施できればと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
最大の理由は、年度中に予定していたイギリスでの現地調査が実施できなかったことである(厳密にいえば、2013年度中に予定していたイギリスでの現地調査を2015年5月に実施し、もう1回、2014年度に予定していた現地調査を実施する予定であったが、それが実施できなかったということになる)。
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次年度使用額の使用計画 |
基本的には、現地調査を繰り下げて2015年度に実施するべきなのであるが、もともと、2015年度にも1回現地調査を行うことを予定しているため、上記の分と合わせて2回現地調査を行うことは難しいかもしれない。その場合は、もともと、最終年度である2016年度には現地調査を予定していなかったところ、1回分を繰り下げて2016年度に実施することで、最終的に研究計画の遂行が可能になると考えている。
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