最終年度の研究成果として、昨年度の報告書で記載していた、①ウエストミンスター制のものでの憲法変動について、議会主権との関係に留意しながら検討を行った論考は、「イギリスにおける憲法改革の変動論」(『憲法改正の比較政治学』40~44、75~107頁)、②もうひとつの政府の責任追及過程として重要な法的コントロールのあり方との関係で、ウエストミンスター制における近時の法的コントロールのあり方について考察を行った論考は、「人権法による『法』と『政治』の関係の変容」(『現代統治構造の動態と展望』151~183頁)、関連して③日本の最高裁判所裁判官の研究の成果は、「園部逸夫--実務と理論の架橋をめざして」(法律時報89巻1号90~95頁)として、それぞれ公刊された。また、一昨年の報告書で記載していた、日本国憲法下における議院内閣制の展開の概説の中で、「ウエストミンスター型モデル」に対する批判を取り上げて、それに対する応答を試みたものとして、「議院内閣制」(『なぜ日本型統治システムは疲弊したのか』1~30頁)を公刊した。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果として、大規模な実証調査は叶わなかったが、イギリスのウエストミンスター制の現在について、通常取り扱われる議会と政府との関係(政治的コントロール)にとどまらず、政権交代を視野に入れた野党と官僚との関係や、裁判官による法的コントロール、それらを含めた憲法変動のあり方にまで視野を広げて議論を行うことができた。また、日本についても、内閣に対する統制という視座から、議会と政府との関係をある程度整理して描き出す中で、イギリスと比較しての特徴を浮かび上がらせることができたと考えている。
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