研究実績の概要 |
2014年度は、本研究における第二段階、国際組織による権力行使、公的権力としての規制のあり方という視点からの検討に取り組んだ。具体的には、平和(維持)活動の領域における人道法規範の適用可能性、安保理の制裁と人権規範の適用可能性、安保理決議に基づく暫定行政活動と人道法規範・人権規範等の適用可能性などを扱い、Bogdandy, A. von; Wolfrum, R.; Bernstorff, J. von; Dann, P.; Goldmann, M. (eds.), The Exercise of Public Authority by International Institutions: Advancing International Institutional Law (Springer, 2010. Pp. xiii, 1005) というシンポジウムに基づく大著の共同研究などを検討した。 研究代表者は、国連安全保障理事会の憲章第7章に基づく活動に関する既発表論文を単行本として刊行する予定であるが、本研究で扱う公権力の視点から同書をまとめるために、本研究における初年度である2013年度の第一段階と2014年度の第二段階の検討を踏まえた研究成果として、同書の最終章を書き下ろしの形で執筆し掲載することに決め、何とか執筆を終えることができた。 また、2014年3月31日に出された国際司法裁判所の捕鯨判決を、本務校である一橋大学における教育素材として使用した上で、本研究の研究成果の一環としての視点から、論文を執筆した。同論文では、国際捕鯨委員会に対する加盟国の協力義務に着目したが、本判決は、公的利益の実現との関連が指摘されることがあるように、本研究とも接点のある問題を含んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
第二段階における、国際組織による権力行使、公的権力としての規制のあり方という視点からの検討については、2014年度の「研究実施計画」に記したように、大まかな計画としては、2014年度には手続的原則の側面に重点を置き、2015年度には実体的な原則の側面に重点を置いて検討を進めるとしていた。「研究実績の概要」に示したように、本研究における初年度である2013年度の第一段階と2014年度の第二段階の検討を踏まえた中間的な研究成果をまとめたところであるが、これは、主に手続的原則の側面に重点を置おいたものであった。 以上を踏まえて、2015年度の「研究実施計画」に記したように、本年度は実体的な原則の側面に重点を置いて検討を進める。 具体的な素材として検討を進めてきた上記領域との関連では、安保理をめぐる正当性向上に向けたアカウンタビリティーの分析・検討については、J. Muller, Reforming the United Nations: The Struggle for Legitimacy and Effectiveness (Leiden, Martinus Nijhoff Publishes, 2006) などが鳥瞰図を与えてくれる。
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