平成27年度は、本研究における最終段階であり、過去2年間の研究蓄積を踏まえて研究成果を研究書としてまとめることに専念した。具体的には、国連安全保障理事会の憲章第7章に基づく活動に関する既発表論文を再構成するとともに、本研究で扱う公権力の視点から同書をまとめるために、本研究初年度にあたる平成25年度の第一段階と平成26年度の第二段階の検討を踏まえた研究成果として、同書の最終章を書き下ろしの形で執筆し掲載することに決め、最終的にまとめることができた。 平成26年度は、本務校の教育および本研究との関連性に鑑みて、日本が当事国であり2014年3月31日に出された国際司法裁判所の捕鯨判決を、国際捕鯨委員会に対する加盟国の協力義務に着目し、本研究の研究成果の一環としての視点から、論文を執筆した。そのために、平成26年度においては上記の最終章書き下ろしに対して十分な時間を割くことができず、平成26年度にまとめたものは暫定版にとどまっていたのであり、平成27年度は、この暫定版を最終版にする作業に取り組んだ。 検討し紹介した素材である、国際的(グローバル)立憲主義、グローバル行政法、国際公権力への公法アプローチ、国際組織のアカウンタビリティなどの近年の動きは、国際組織の活動が適切な規制の対象としても扱われる必要があることを象徴的に示すとともに、活動を規律する手続的および実体的な原則と規則およびそれらの実施の仕組みを模索するものである。またこれらの動きは、基本的に類似の方向性をもち、具体的な内容の点でも重なる点が多い。 以上のように、本研究は国連安全保障理事会の憲章第7章に基づく活動に焦点をあてながらも、同理事会を国際社会の公権力として位置づけることにより、「公」の概念の使用の有益性を示し得たものと考える。
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