研究課題/領域番号 |
25380062
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
洪 恵子 三重大学, 人文学部, 教授 (00314104)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際刑事裁判 / 国際軍事裁判 / 公正な裁判 / 国際社会の処罰権 |
研究概要 |
私の研究課題は「『公正な裁判』概念と国際刑事裁判」である。すなわち主要な研究対象は国際刑事裁判であるが、はじめから検討を国際刑事裁判に限定するのではなく、国際裁判というもの一般に関する議論を視野に入れている。研究計画は(1)国際人権法で発展してきた「公正な裁判」概念の整理、(2)国内裁判を対象として洗練されてきた「公正な裁判」概念は国際裁判にも妥当するかどうかの考察、(3)国際刑事裁判の制度上の問題(独立性の問題)、および(4)国際刑事手続の「公正さ」の問題を検討することを柱にしている。これらの柱はかならずしも時系列の順序ではない。 平成25年度は特に(2)に関連して、国際刑事裁判と国際軍事裁判の相違に関する検討を行った。つまり一口に国際刑事裁判と言っても、歴史的には国際軍事裁判も存在していたのであり、国際軍事裁判と国際刑事裁判の区別が議論の出発点として重要であると考えたためである。その結果、現在の国際法学の通説的見解は国際軍事裁判所(いわゆるニュルンベルグ裁判および東京裁判)を国際刑事裁判の嚆矢とするが、裁判の本質を「公正さ」であると捉える場合にはこうした評価は受け入れがたいこと、他方で国際軍事裁判が有していた強制力は刑事裁判を遂行する上で現在でも重要なのであり、この点をどう克服するかが今後の国際刑事裁判の実効性を確保するうえで不可欠だと思われた。また国際軍事裁判にせよ、国際刑事裁判にせよ、その正当性の源は国際社会の処罰権(ius puniendi)という観念にあるという最近のドイツの学説についても検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
私の研究において考察の対象とする(国際法上の)制度や概念には、学説や国家実行において必ずしも一致した理解があるわけではないものが存在する。そこで「国際刑事裁判」や「国際軍事裁判」といった基本的な概念について、それらの意味するところを当然とするのではなくて、あらためて考察しておくことは重要と考えるので、その問題を今年度は検討することができたことは、私の研究計画においては、順調であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度(平成26年度)は引き続き国際裁判に関する内外の議論状況に関して情報を収集しながら研究計画に従って研究を進めたいが、特に「公正な裁判」概念は国際裁判にも妥当するのかという問題について、海外の学説の整理を行う予定である。例えば、すでに研究申請時に重要な論文の著者として挙げた研究者が関連する問題について書籍を公刊したので、この書籍の評価は今年度の最重要課題であり、また米国においても国際刑事裁判に関する公正さ(fairness)を直接扱った論文が公刊され始めたので、それらの議論を整理したい。なお前年度行ったように国際軍事裁判といった、国際刑事裁判に関係の深い制度についても引き続き検討を行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究課題に関連のある平成25年度内に開催予定であった国際学会が、平成26年(2014年)4月に開催されることになったため。 平成26年4月に米国ワシントンで開催された米国国際法学会(ASIL)国際法協会(ILA)共催の国際学会に参加したため、この出張の費用の一部として使用したい。
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