研究実績の概要 |
本年度は、昨年度ウィーンで開催された国際比較法会議に提出した、日本における外国法の調査・適用に関する国別報告書を英語論文として公表した(Shunichiro Nakano,Treatment of Foreign Law in Japan (19th International Congress of Comparative Law, Japanese Reports for the XIXth International Congress of Comparative Law (CCLP Publications No. 13,2015)pp.90-99)。その中では、とくに準拠外国法不明の場合の扱いについて、従来の学説が近似法によるとしてきた問題は、正しくは準拠法外国法の内容が明らかにされている場合であると整理し、それ以外の場合には内国法の適用によるのが妥当であることを、従前の裁判例の分析から明らかにした。 また、国際親族法・相続法分野における当事者自治原則の採用状況について、ヨーロッパを中心とした比較法的研究を実施し、論文にとりまとめて公表した。その中では、当事者自治原則の採用が国際的な潮流になっている反面、それには量的制限や書面性といった一定の制約も伴うことを明らかにした上で、わが国においてこれを採用する場合の留意点を指摘した(中野俊一郎「国際親族・相続法における当事者自治の原則」神戸法学65巻2号1-54頁(2015年))。 このほか、国際裁判管轄の合意に関する判例批評、国際仲裁に関する外国判例の紹介、国際私法に関する共著の教科書などを公表した。
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