研究課題/領域番号 |
25380069
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
長谷河 亜希子 弘前大学, 人文学部, 准教授 (00431429)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | フランチャイズ / 独占禁止法 / 反トラスト法 / 優越的地位の濫用 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、主として以下の3点に焦点を合わせて研究を行った。 一つは、米国のフランチャイズ(以下、FCとする)・システムの法規制について、FC本部の加盟者に対する濫用的行為の規制という観点から、いかなる規制がされているのかについて検討を行った。すなわち、米国には、日本でいうところの優越的地位の濫用規制はないとされている。しかし、実際には、州のFC法にて規制されている場合もあれば、それら州法がない場合でも、近年は、good faithや非良心性の法理など、さほど積極的に利用されていなかった法理(good faith)や、消費者問題に主として適用されてきた法理であり、事業者に対してはあまり適用されていなかった法理(非良心性の法理)など、いわゆる一般規定を活用しようという動向がみられる。判決内容を見ても、優越的地位の濫用規制が存在する日本よりも、実際には米国の方が本部の濫用行為の規制に力を入れているといえる状況にあることを明らかにした。 もう一つは、日本の優越的地位の濫用に基づいて、FC本部の濫用的行為に対して、加盟者が差止訴訟を提起した際の問題点につき、24時間営業及び代行収納等強要行為の差止訴訟の判例評釈において検討をした。現状では証明基準が明確になっていないため、加盟者らは、金銭的不利益から非金銭的不利益まで様々なものを、本部の挙げるメリットと天秤にかけて、加盟者に課される不利益を立証することになったが、これは際限のない比較衡量に突入しただけとなったという問題を明らかにした。 最後の一つは、米国で、FC本部が加盟店に対して行った濫用行為の一種(不当な解約)に関する諸訴訟の分析を行い、加盟店の地位の脆弱性等について明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①米国のフランチャイズ・システムの法的規制に係る近年の最新動向(州法の法改正、及び、諸判例)について、学会報告という形で報告することができたこと(論文としての発表は、次年度となる)、②コンビニ紛争(本部・加盟店間で生じる問題)を、独禁法上の「優越的地位の濫用」に基づいて、民事訴訟で争う際の立証上の問題点について、判例評釈という形で研究を進めることができたこと、③米国の、本部による、加盟店に対する一種の濫用的行為(不当な理由での解約など)が争われている訴訟について、検討を行うことができたことから、当初予定していた研究をほぼこなせたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、予定通り、まずは、フランチャイズ本部と加盟店間のリベート帰属をめぐる諸問題について、日米の比較法的観点から分析を試みる。もう一つは、日本のコンビニ・フランチャイズにおける見切り販売の制限に関わって提起された、多数の損害賠償請求訴訟の分析を行う。さらに、米国のフランチャイズ判例の分析と、米国のフランチャイズ規制の動向について、検討を重ねていくことになる。
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