本研究は、米国と日本のフランチャイズ(FC)規制の現状を分析し、日本のFC規制のあり方への示唆を得ることが目的である。研究の柱は(1)優越的地位の濫用問題が関連する日本のFC判例の分析と、(2)FC加盟者の事業者性に関する日米の判例分析である。(1)に関しては、コンビニの代行収納及び深夜営業の強制差止訴訟、および、コンビニの見切販売の制限が優越的地位の濫用に当たるとする損害賠償請求訴訟とに分類できる。そこで浮き彫りになったのは、利益と不利益の比較衡量に依拠しての優越的地位の濫用の判定が極めて困難であることと、証拠収集の難しさである(証拠はFC本部側に偏在しており、以前の米国調査でも、ディスカバリー制度なしに加盟店が訴訟に挑むのは無理と指摘された)。(2)に関しては、日米でFC加盟者の労働者性に関する係争が生じている。日本では、労働組合法が適用される労働者性が、米国では、被用者性(即ち、最低賃金、労働時間規制、社会保障制度等の対象となる労働者性)が争われている。このように多少側面は異なるが、背景には同様の問題が横たわっており、それは、(1)の問題と関連している。すなわち、第一に、FC本部がシステム変更や新システム等の導入を一方的に決定し、加盟者からの交渉の要請に一切応じない場合が珍しくないこと、第二に、FC加盟者は本部の指示に従わなければならず、さもなくば、FC契約を解約される。従って、加盟者は極めて事業者性が希薄で、その立場は労働者並みに弱いことから、団体交渉力を確保することが必要でありながら、事業者とされているため、本部に交渉を拒否されると加盟者らはなすすべがないという現状である。これらの問題を組み合わせて研究を遂行することで、よりFC加盟者の実態に応じた知見を得ることができた(後日、岡山及び東京の労働委員会においてFC加盟者は労働組合法上の労働者との判断が出ている)。
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