研究実績の概要 |
平成28年度にそれまでの研究の成果をとりまとめ、Yuichiro MIZUMACHI, " Vers un nouveau modele de droit du travai ? La reflexion theorique et comparative " とのタイトルのフランス語論文に盛り込み、Melanges Antoine LYON-CAEN(最新の労働法理論に関する論文を集めた書籍。近刊予定)に投稿している。この研究成果について、レヴューを受けるために、平成29年9月にフランスを訪問し、フランス国務院顧問のAntoine Lyon-Caen氏、パリ・ソルボンヌ大学のPascal Lockiec氏等と面談・討論した。この討論・レヴューの成果は、水町勇一郎『労働法〔第7版〕』(有斐閣、2018年3月)等に盛り込まれ、公表されている。また、日本で現在進められている「働き方改革」など労働法制改革のなかにもその視点を反映させている。 本研究の成果は、労働関係をめぐる問題が複雑化するなかで、当事者間の自主的な問題解決や裁判所による公権的な紛争解決だけでは十分な対応ができないことが諸外国でも共通の認識となっており、これを克服するために、専門性を有する行政委員会等による柔軟で迅速な紛争解決が効果的なことが政策の方向性として明らかになったことである。日本の「働き方改革」でも裁判による紛争解決(司法救済)のみならず行政ADR(行政による紛争解決援)の重要性が示されている。今後は、本研究を基盤として、専門性を生かした行政委員会等による紛争解決の具体的な内容と方向性を明らかにしていくことが政策的課題となるものと考えられる。
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