平成27年度は,研究計画上,研究期間の最終年度に当たり,先行する2年間の比較法的検討,理論的検討,および現況調査の結果を踏まえ,具体性・現実性を有する解釈論摘および立法論的提言を行うために,これらの成果を体系化し公表すること,そして,公表された成果について,各方面からの反応を踏まえてさらに考察を深めるとともに,研究成果の総括を行うこととしていた。 これを受けて,年度冒頭に実施された,日本刑法学会第93回大会ワークショップ「司法取引」において,第189回国会に提出された刑事訴訟法改正法案の内容,とりわけ,捜査協力型協議・合意制度,および刑事免責制度について,立案段階における議論も踏まえた上でその当否の検討を行い,その際行った報告に対して,各方面からの反応を得ることができた。この報告の内容は,年度末の時点で,それまでに寄せられた反応も踏まえた形でこれを公刊する機会を得た。併せて,報告後の国会審議の進捗状況や,関連する議論の進展に応じた形で,特に協議・合意制度について加えた検討についても,別稿で公表することができた。 以上を通じて,本研究の成果を,寄せられるフィードバックも踏まえた形で体系化し,取りまとめるという所期の目的は,相当程度果たされたものといえる。またその成果は,現に進展しつつある立法の内容の当否を評価するに際しても依拠しうる,一定の妥当性を備えた理論枠組みに結実したものということができる。
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