オランダにおいては、一般医療は、民法上に規定する医療同意法があり、安楽死に対する同意も本法による。本法によれば、16歳以上は医療同意が可能であり、また12歳を超えていれば親権者の同意も必要になる。したがって12歳未満については同意権はない。また、安楽死行為については、実施した医師には生命終結行為後、検視官への届出制度が2002年に立法化されている。本研究では、今年度は、本人の同意がないために安楽死とは言ことはできない生命終結行為、つまり新生児あるいは後期妊娠中絶の場合の生命終結行為について、特に今年度オランダでの議論が再燃したので(2015年12月に立法化され、2016年2月に生命終結行為を行った医師の報告手続きの範囲がさらに拡大する法が施行された)、関係者へのインタビュー等も実施しながら検討した。 ここで問題となっているのが、本人の同意、に関する法的位置づけである。今年度はとりわけ公表されている安楽死行為審査委員会の年次報告書を読み込みんだうえで、本人の同意に関する、オランダでの取り扱い、たとえば精神疾患患者の場合の同意と強制医療に関しても比較研究を行った。わが国でも精神保健福祉法が改正されたばかりであり、家族の同意と本人の同意とのかねあいについての議論が盛んになっているが、この点、オランダでは、逆に本人の同意が強すぎて、必要とも思われる事態に対応できないということも問題となっている。また、公表されている報告書ではわかりにくい、医師に要請される「注意深さの要件」についても、その背景を中心にインタビューを行い、オランダの終末期医療における特長ともいえる個人の尊厳の重要性について検討を行った。
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