研究課題/領域番号 |
25380090
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
南部 さおり 横浜市立大学, 医学部, 助教 (10404998)
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研究分担者 |
藤原 敏 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20173487)
西村 明儒 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (60283561)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 裁判員裁判 / 刑事司法 / 医学証拠 |
研究概要 |
可能な限り、裁判員裁判以外の事件も含め、医学的な争点が存する事件の裁判傍聴を行い、当事者への聴き取り調査などを実施した。そうした活動の過程で、医学的因果関係が裁判の争点となった複数事件の裁判記録や証拠書類等の提供を受け、複数の弁護士と協力し、立証方法や反対尋問の内容に関する助言を行った。1事件の控訴審においては、意見書を提出するなどの訴訟協力を行った。 また、犯罪・事故被害者、他分野の研究者等の求めに応じて、提供を受けた裁判資料の分析と解説を行った。その成果としては、後掲論文②③④として、まとめた。現在、強制起訴で2件目、「嫌疑不十分」決議事例としては国内初となった「松本柔道事故」に関する論稿を執筆中であり、本学紀要に投稿予定である。 さらに本研究での成果は、2013年11月明治大学社会科学研究所主催シンポジウム「今裁判員裁判を考える」で、元裁判官、弁護士、法学研究者らとともにシンポジストとして登壇し、「法医学の立場から見た裁判員裁判の問題点」において報告し、各方面の専門家や学生、市民たちとの意見交流と啓発のために役立てることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
明治大学社会科学研究所主催シンポジウム「今裁判員裁判を考える」で、本年度の研究成果を公表し、各方面の専門家との意見交流を行えたことが非常に大きい。同シンポジウムの反響は大きく、様々な問い合わせを受け、次年度からの研究活動への大きな推進力となった。なお、同講演内容は、明治大学社会科学研究所 第31回 社会科学研究所公開講演会「いま裁判員裁判を考える」(2014年3月発行)冊子に収録されている。 また、弁護士や犯罪・事故被害者との連携関係を実現し、実際の裁判において意見を提出し、本研究成果が活かされたことも予想以上の成果であった。さらに学会発表や論文発表を通じ、捜査機関や関係機関、マスコミからの問い合わせも多く、当初の予想以上の情報発信を行うことができた。 学術論文として、①「自殺と犯罪、刑事司法」、②「学校事故における修復とは―2つの柔道事故と学校側の対応から考える―」、③「柔道練習中の死亡事例への刑法の適用に関する考察」、④Case of Fatal Head Trauma Suffered During Japanese Judo. ⑤「ネグレクト事件に対する裁判員の評価に関する一考察」、⑥「性犯罪と裁判員裁判」、⑦Mother who starved her baby to death: Is she culpable of murder or of another crime? ⑧鳥取連続不審死事件からみる裁判員裁判と死刑判決、学会発表として(1)「児童虐待事件裁判員裁判における医学証拠の役割」第5回 日本子ども虐待医学研究会・学術集会, 2013年7月,(2)「裁判員裁判における児童虐待死事件の量刑判断」第97次日本法医学会学術全国集会, 2013年6月,(3)「柔道事故訴訟における急性硬膜下血腫発症機序の認定」第97次日本法医学会学術全国集会で、それぞれ報告した。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、弁護士をはじめとする司法実務家と積極的に連携し、実際の裁判において医学証拠が正確に理解され、より適正な事実認定が行われるための助言や議論を行っていきたい。さらに、徳島大学法医学教室、慈恵大学法医学教室、兵庫県監察医務室などとの連携を行い、最新の法医鑑定実務に関する知見を取り入れるよう努める。また、弁護士や法医学者を通じて、医学的争点のある裁判員裁判に関する情報の取得を積極的に行う。 さらに、上記の活動および裁判傍聴等を通じて得られた知見は、本年度と同様、時機に応じた論文・学会発表を積極的に行っていきたいと考えている。具体的には、国際学会としてはThe American Society of Criminology の70th Annual Meeting において“Problems concerning examination of the medical evidences in the Japanese Lay judge system”の演題の下、これまでの研究の成果を発表し、陪審員制度の伝統を持つアメリカの犯罪学者・刑事法学者らと活発な意見交換を行うことで、陪審員制度とその運用方法に関する比較法的研究を行うことを計画している。
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